無傷の4連勝で羽田盃を制したミックファイア(TCK提供)

【血統値】10日、大井競馬場で行われたSⅠ羽田盃(1800メートル)は、4番人気のミックファイア(牡=大井・渡辺和)が4角で先頭に立つと、断然人気のヒーローコール(牡=浦和・小久智)に6馬身の差をつけ圧勝。南関東の牡馬クラシック初戦を制した。

 ミックファイアは2歳時に3戦3勝の成績を残したものの、爪の不安もあり、今回は5か月ぶりの実戦。馬体重はマイナス16キロでの出走となったが、それをものともしない驚異的な走りで無傷の4連勝を飾った。

 同馬の父は現在、地方競馬リーディングのトップを走るシニスターミニスター。母は中央で4勝を挙げ、準オープンまで出世したマリアージュ(父ブライアンズタイム)という血統。2021年の北海道サマーセールで500万円(税抜き)で落札された。今となってはお買い得な値段だったと言えよう。

 このミックファイアの血統表を見ると、曽祖母の欄にはオールドファンにとって懐かしのオールアロングの名が出てくる。オールアロングは1979年生まれのフランス産馬で、父は後に日本に輸入されたターゴワイス。3歳春のGⅢペネロープ賞を4馬身差で圧勝し、仏3歳牝馬の中心的存在と目されたものの、英オークス(6着)、仏オークス(5着)ともに敗れてしまった。秋のヴェルメイユ賞でようやくGⅠ初制覇を果たしたものの、続くGⅠ凱旋門賞で15着と惨敗を喫した。そこから、第2回ジャパンカップに出走した。

 この年は同馬のほかにもターフクラシックSなどGⅠ4勝のエイプリルランと欧州の一流馬が参戦。米国からはGⅠ11勝のジョンヘンリー、カナダからは前年の2着馬フロストキング、アイルランドからは翌年の勝ち馬スタネーラと豪華メンバーが揃った。

 レースは内から抜け出して勝ったかと思われたオールアロングを米国のハーフアイストが外から差し切り優勝。1番人気のジョンヘンリーは13着に終わった。8大競走の勝ち馬が一頭も出走しなかった日本勢ではヒカリデユールの5着が最高だった。

ジャパンカップ後に世界的名牝へ

1982年の第2回ジャパンカップで2着だったオールアロング(右)

 4歳になった翌83年にはオールアロングはさらなる成長を見せる。凱旋門賞を制すると北米に遠征し、ロスマンズインターナショナル(加)→ターフクラシックS→ワシントンDC国際とGⅠ4連勝を達成。この年の仏、米両国の年度代表馬に輝き、世界的な名牝となった。繁殖としては13頭の子を産んだが、重賞勝ち馬は仏GⅡグレフュール賞、仏GⅢシェーヌ賞を勝った初子のアロングオール(父ミルリーフ)だけという物足りない結果に終わっている。

 オールアロングの名前もすっかり忘れ去られていたが、昨年の8月7日にカラ競馬場で行われた愛の2歳GⅠフェニックスSで、オールアロングのひ孫となるリトルビッグベアが7馬身差で圧勝。オールアロングのジャパンカップ参戦から40年が経過し、ようやく子孫からGⅠ馬が誕生した。そして、今年は南関東から3冠の期待が高まるミックファイアが登場。リトルビッグベアとミックファイアが、曽祖母オールアロングが走った東京競馬場で走る日が来るのを今から期待したいものだ。

著者:東スポ競馬編集部