【記者が振り返る懐かしのベストレース】高い支持を集めた04年のダンスインザムード(単勝オッズ・140円)。全兄姉にGⅠ馬が2頭(ダンスインザダーク、ダンスパートナー)もいる良血で、所属はリーディング藤沢和厩舎、牝馬1冠・桜花賞を快勝…当然の成り行きだった。
レースは桜花賞よりはるかに遅い流れになったが、ダンスインザムードはかかる面を見せず、直線まで脚を温存。またしても楽勝かと誰もが思ったが…。追い出されてから鞍上に反抗する面を見せてまさかの4着敗退。
代わって樫の女王に輝いたのがダイワエルシエーロだった。こちらも良血。母は98年桜花賞2着のロンドンブリッジ、父はダンスと同じサンデーサイレンス。3角で早くも先頭に立ち、そのまま押し切ってしまった。
「今日は少しだけオヤジに近づいたかなと思える騎乗ができた」
レース後の鞍上・福永は誇らしげな表情でインタビューに答えた。惨敗もあり得るリスクを伴った積極策だったが、大本命馬を負かす唯一の戦法…変幻自在な手綱さばきで数々の栄光をつかんだ父・福永洋一をほうふつさせる騎乗だった。
その後はGⅢ2勝(京阪杯、マーメイドS)のみで、2つ目のビッグタイトルには縁がなかったダイワエルシエーロ。オークスで燃え尽きた感もあるが、オークスでのGⅠ勝ちは繁殖馬としてはこれ以上ない価値だった。
(2009年5月20日付東京スポーツ掲載)
著者:東スポ競馬編集部