
オークス2023
[GⅠオークス=2023年5月21日(日曜)3歳牝、東京競馬場・芝2400メートル]
21日、東京競馬場で行われた第84回オークス(芝2400メートル)は断然の1番人気に支持された桜花賞馬リバティアイランド(中内田)が危なげのない走りで堂々と2冠を達成した。勝ち時計2分23秒1(良)。驚異の末脚を繰り出した桜花賞以上もさることながら、オークスでの6馬身差大勝はまさに歴史的偉業だ。3冠達成が濃厚となった新時代のスターはいったいどこまで強くなっていくのか。
「パドックでは時々テンションが上がっていましたけど、レースが近づくとまた落ち着いてくれて。改めて精神がしっかりとしている馬だなと感心しましたね」
レース後、安堵の表情でこう語った中内田調教師。久々の輸送競馬がそうさせたのか、あるいは25度まで上昇した熱気に違和感を覚えたのか。リバティアイランドは終始、落ち着いたたたずまいだった桜花賞と比べて発汗やイライラするしぐさが目立っていた。唯一の不安材料を挙げるとすればこれだけだったが、それも杞憂に終わり、検量室前に戻ってきたリバティアイランドはまるで軽いストレッチ運動をしたかのようなすがすがしい顔つきに。大観衆を夢心地にさせた「絶景」(=パフォーマンス)は、天才ランナーのリバティにとっては至って日常的な営みだったようだ。
レースを振り返ろう。「桜花賞では進んでいきませんでしたが、今度は少しだけ押してポジションを取って運ぼうと」(中内田師)という計画通り、きちんとゲートを出ると、ゆったりとした動作のまま6番手をキープし、スムーズに1コーナーを回る。前半5ハロンを60秒ちょうどで通過したライトクオンタムから約10馬身差。一度も行きたがるそぶりを見せず、川田も手綱をがっちりと押さえたまま直線へ。ほとんど馬なりで先頭を走っていたラヴェルに坂上で並びかけると、満を持してムチが放たれる。ここからゴールまでの300メートルが本日のハイライト。他馬とは一線を画すダイナミックなフットワークで悠々とフィニッシュした。
「東京への輸送もあり桜花賞を使ったこともあり、テンションがだいぶ上がっている状況だったので道中は〝まだだよ〟と馬に伝えながらでした。みなさまのおかげで安全なスタートを切れることができましたし、期待に応える走りができて良かったと思います」。感謝を交えてそう振り返った川田は「(ムチを使ったのは)今後のために2400メートルをしっかり走り切ろうと。差がつくことは分かりましたけど、馬の動きを求めてみました」と、同世代のライバルではなく、近い将来に挑むであろうさらに高いステージを見据えたゴール前だったことを明かした。
走破時計はレコードだった19年ラヴズオンリーユーの2分22秒8に続くものだったが、当時は5ハロン通過が59秒1。前半のペース差、そしてゴール前の手応えを踏まえれば遜色ない内容であり、以後3度も海外GⅠを制した女傑をしのぐ記録を打ち立てる可能性は多分に秘めている。「どこまで良くなるのだろうか…。期待しかありません」と結んだ中内田師。それはファンも同意見だ。今週のダービーの走破時計も興味深いが、今秋、そして来年以降、彼女が我々にどんな絶景を見せてくれるのか、楽しみしかない。
著者:東スポ競馬編集部