中距離戦線での活躍を期待されたヴェルデグリーンの弟グリューネグリーン(平松さとし氏提供)

日本ダービー2023

[GⅠ日本ダービー=2023年5月28日(日曜)3歳、東京競馬場・芝2400メートル]

 2013年にGⅡオールカマーを制すと、翌14年にはGⅡアメリカジョッキークラブCも優勝したのがヴェルデグリーン(牡・相沢)だ。

「爪を中心に全体的に弱くて出世が遅れました」(相沢師)という同馬だったが、古馬になって本格化。中距離戦線では目の離せない存在になるかと思われたのもつかの間、歓喜のAJCC制覇からわずか5か月後のGⅠ宝塚記念でまさかのシンガリ12着と大敗した。

 これを受けて放牧に出されると、8月の頭に牧場から相沢師に「一本の電話が入った」。

「最初の電話では『腹痛を起こしたので緊急手術を行います』という連絡が入りました」

 それから3日後、再び電話が鳴ると、思わぬ事実を告げられた。

「開腹したら手がつけられないくらい〝がん〟が広がっていたそうです」

 こうしてヴェルデグリーンは唐突に星になってしまった。

 そんな非業の死を遂げた駿馬の弟がグリューネグリーン(牡3)だ。兄と同じ相沢厩舎に入ると、昨秋にはGⅢ京都2歳Sで重賞初制覇。今週末に行われるGⅠ日本ダービーに駒を進めてきた。

 ちなみに母の母はウメノファイバー。相沢厩舎に初めてのGⅠ制覇を届けてくれた馬で、勝ったレースはダービーと同じ東京競馬場の芝2400メートルが舞台となるGⅠオークス(1999年)だった。

 また、手綱を取るのは石川裕紀人騎手。デビュー10年目となる同騎手が初勝利を挙げたのは14年6月1日。第81回日本ダービー当日だった。さまざまな思いが交錯する頂上決戦。今年はどんなドラマが待っているだろうか。(平松さとし)

著者:東スポ競馬編集部