
安田記念2023
[GⅠ安田記念=2023年6月4日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝1600メートル]
これはリベンジだ。ヴィクトリアマイルで大きな不利を受けたナミュール(牝4・高野)が中2週で安田記念に〝再登板〟。あれだけのアクシデントがあったら、馬体に違和感が残ってもおかしくないにもかかわらず、即座に反撃に行動を移した。それだけダメージがなかったことに加え、「こんなものではない」と陣営が強く思っている証拠だ。
問題のシーンをもう一度振り返ろう。スタートしてからほどなく、大外枠のソダシが内めに進路を取って行った地点。他馬とのスペースを十分確保しなかったことで、まずはルージュスティリアが寄られ馬群が必要以上に凝縮。内からクリノプレミアム、ナミュール、ナムラクレアを含めた計4頭が互いに接触して、被害を受けた。ソダシの鞍上レーンにはもちろん、過怠金5万円の処分が科されている。
中でも、最も犠牲となったのがナミュールだった。クリノプレミアム、ナムラクレアの間で〝おしくらまんじゅう〟のような形になり、大きくバランスを崩した。鞍上の横山武が「落馬しなくてよかったと思うぐらいの不利」と憤慨したのも納得だ。あそこまでリズムを崩してはその後、瞬時に立て直してメイチの勝負にいけるはずもない。それでもゴール前は横一列の馬群の中からわずかに抜け出して7着に上がった。あれはナミュールの意地みたいなものだ。
「全能力を出し切れずに終わってしまいました。レース後はコンディションが落ちていないことを確認して、メンバーが強いのは承知の上でこの安田記念へ。中2週ですが、さばきの柔らかさを見ても問題はないでしょう」(高野調教師)
この中間は特段速い時計は出していないが、あえて強力GⅠホース10頭参戦の頂上バトルに間隔を詰めて挑んできた采配だけに、デキの良さは担保されている。
「この馬が持っているポテンシャルさえ引き出してくれればここでもやれていいと思っています」
東京で受けた被害は東京で返す――。小柄な牝馬による〝東京リベンジャーズ〟。たくましい反撃戦が幕を開ける。
著者:東スポ競馬編集部