3年連続で参戦した安田記念では3→2→1着と尻上がりの成績を残したタイキブリザード

安田記念2023

[GⅠ安田記念=2023年6月4日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝1600メートル]

「最後の直線だけブリンカーを着けたいです」

 現役時代の岡部幸雄元騎手にそう言わせたのはタイキブリザード。伯楽・藤沢和雄元調教師が管理して、2度も北米に遠征するなど、1990年代半ばに大活躍した外国産馬だ。

 今でいう3歳の2月にデビュー。この新馬戦ですでに530キロあった大型のシアトルスルー産駒は、前進気勢が強く、行きたがるタイプ。パワーがあるだけに、岡部元騎手を始めとした陣営も相当な苦労を要した。〝序盤はもっとゆっくりでよいから、一所懸命走るのは最後の直線だけにしてほしい〟と日々の調教から手を焼いた。そんな時に漏れたのが冒頭のセリフだった。

 しかし、そんな時にも岡部元騎手は次のように言っていた。

「確かにかかるけど、逆にいえば走ろうとする気持ちがあるということ。力はあるのに走ろうとしない馬よりはずっとマシです」

 この見解には藤沢元調教師も首肯。厩舎一丸となって〝走る気は損なわないように〟かつ〝ゆっくり走れるように〟教育を施した。結果、タイキブリザードは徐々に折り合いを覚えて力を発揮できるようになったのだが、それを如実に表したのが、春のマイル王決定戦GⅠ安田記念での成績だった。1995〜97年まで3年連続で同レースに出走すると、3→2→1着。成長ぶりをしっかりと数字で示し、最後には悲願のGⅠ初制覇を達成してみせた。

 さて、今年の安田記念にも3年連続での出走となる馬がいる。シュネルマイスター(牡5・手塚)だ。過去2年の成績は3→2着。タイキブリザードのように3度目の正直となるか、注目したい。(平松さとし)

著者:東スポ競馬編集部