入念にウオーミングアップを行うルージュエヴァイユ
入念にウオーミングアップを行うルージュエヴァイユ

エリザベス女王杯2023

[GⅠエリザベス女王杯=2023年11月12日(日曜)3歳上牝、京都競馬場・芝外2200メートル]

【トレセン発秘話】「ここで満足に浸ってばかりはいられません。この後が悩みどころなんです。ジャパンCに行くか、それともエリザベス女王杯に行くか…」

 秋初戦の府中牝馬Sから4日後、黒岩調教師はこう心中を語った。何の話かというと、厩舎の看板馬ルージュエヴァイユの「ロードマップ」の話である。

 振り返れば、オークスで騎乗した池添も、そのポテンシャルの高さに舌を巻いていた。口向きに難を抱え、まともに走れなくても6着まで押し上げた走りは紛れもなくGⅠレベル。今年初戦の愛知杯(12着)、立て直しを挟んでのメイS(10着)こそ振るわなかったが、続く牡馬相手のエプソムC、さらには休養を挟んだ前走で2着に健闘。再び軌道に乗ってきた。

「いやあ〜先生、驚きましたよ。出遅れたうえに、3〜4コーナーで大外をブン回して最後まで伸び切りましたから。とんでもない脚力ですね」といったこちらの振りに対して、「はい。やはり素晴らしい馬なんです。なんとか勲章を取らせてあげなければ…と思っているんですけどね」と師が返答した後に続いたのが冒頭の弁である。

 要するに、敷居は高くても得意中の得意の東京で行われるジャパンCで着取りを狙うか、エリザベス女王杯であくまでGⅠ取りを目指すのか…。そういった悩ましい選択を陣営は迫られたわけである。

 当方が仮にルージュエヴァイユの一口を持っていれば、絶対的にジャパンCを使ってほしいと願う。選択の余地はない。イクイノックスやリバティアイランドがいるだけに勝ち負けまでは厳しいかもしれないが、舞台が東京なら万全の状態で臨める可能性は高く、そしてまた掲示板に入れる可能性も決して低くはない。言わずもがな、ジャパンCの賞金は高い。4着で7500万円、5着でも5000万円だ。

 一方、エリザベス女王杯では2着でも5200万円。勝てる見込みがあるなら女王杯でOKだが、負けることが前提ならJCのほうがはるかに見返りが大きくなる可能性は高いのだ。そんなわけでルージュエヴァイユの進路に熱視線を注いでいたところ…。

「文句ない動きを見せてくれましたね。ここにきて体に芯が入ってきましたし、道中のコントロールもバッチリ。前走から心身ともにかなり良くなっています。距離もこなせる範囲なので、うまく末脚を引き出せれば」と1週前追い切り後に女王杯への参戦を決意表明したトレーナー。陣営は勝負に出た(=勝てる見込みがあると判断した)とみていいだろう。

 とはいえ、重賞未勝利の関東馬だけに人気はそれほど集まるまい。つまり、馬券的には非常に魅惑的に映るルージュエヴァイユなのである。

著者:虎石 晃