ラキシスが角居厩舎に来たばかりのころは、とても痩せていて、調教を重ねても坂路を(4ハロン)58秒台で上がってくるだけでいっぱいいっぱいだったと聞きました。「ゲートも全然、出てくれなくて、試験は和田(竜)が魂で受からせてくれたみたいなものだったよ」と振り返るのは担当だった滝川助手です。

 そんな彼女が後にエリザベス女王杯(2014年)を制し、大阪杯(15年=GⅡ時代)ではあのキズナを破るなんて誰が想像できたでしょうか。その大阪杯はルメール騎手にとって「JRA所属騎手」としての初勝利でもあり、ラキシスの名前は歴史に刻まれることになりました。でも当時を振り返る滝川助手の表情は優しげながら少し悔しさ、やるせなさもにじんでいたんです。

「本当はGⅠをもっと勝てる馬だった。ただ、体質が弱く、カイ食いも細くて…。調整がすごく難しかった」

 ヴィクトワールピサやハットトリック、サートゥルナーリアも担当した腕利きの滝川助手は、実は「食べない馬でも食べるようになる」カイバ作りの名人としても有名。そんな滝川助手でも「なかなか食べさせられなかった」というラキシスは、能力を出し切るのが難しい中でも誰にも負けない「気持ちの強さ」を持っていた子だったそう。

「あの気持ちがあったから、どんなに不利な展開になっても鬼脚を使ってくれた。京都大賞典(15年4着)の時なんてすごく悔しかったな。展開が不利過ぎたけど、猛然と追い込んでゴール板を通過してからブチ抜けてたからね」

 ラキシスに関しては「やり残したことが多い」と語る滝川助手。それが悔しげな表情の理由だったのですね。

「無事に繁殖に上げられたのは本当に良かった。でも、初年度のシルヴィスが志半ばで亡くなってしまって…。その後に角居厩舎が解散したから、ラキシスの子を俺がやれることはないんだろうなって思ってたんだ」

「歩いているのを見ると見間違うくらい」

 ところが昨年の秋、「ラキシスの子を預けてもらえることになりましたよ」と辻野調教師から滝川助手に報告があります。それが父も元角居厩舎のエピファネイアであるマキシ(牡)でした。

「初めて会った時は驚いた。首差しから肩にかけての感じがラキシスそのものなんだもんね。マキシは大型でガッシリしてるから体形とかは違うはずなのに…。歩いているのを見るとラキシスだと見間違うくらい」

 マキシは母と違い穏やかな性格で、カイ食いも“超”旺盛。まるで似ていないはずなのに、担当の滝川助手が見間違う雰囲気があるなんて「血」とは不思議で尊いものだなあと思います。成長のゆっくり具合は母と同じだそうなので、デビューは秋以降になるとのこと。まだクラシックに出走したことのない大島昌也オーナーが「来年こそ、この馬でダービーへ」というくらい楽しみにされているとのことですし、滝川助手が母に感じている思いも含め、彼の競走馬人生が豊かなものになることを今から願ってやみません。

 余談ですが、ラキシスって「ファイブスター物語」っていうアニメのヒロインの名前なんです。彼女の子供はみんな、このアニメの登場人物から取られているはずなんですけど、辻野厩舎でそれを熱く語ったら皆さんポカーンでした。

「絶対に由来はそうだ!」と勝手に思っているので、この原稿でファイブスター物語ファンの方に「ラキシス一族」のことが広まって、その方々が競馬ファン、POGファンになってくれないかなあなんて…願いを持ったりもしています。

ラキシスを母に持つマキシ

著者:赤城 真理子