皐月賞2025
[GⅠ皐月賞=2025年4月20日(日曜)3歳、中山競馬場、芝内2000メートル]
皐月賞(20日=中山芝内2000メートル)に向かう絶対王者クロワデュノールの周囲が、一瞬ザワついた。らしからぬ併走遅れを喫した2週前追いで突如吹き始めた向かい風…。だがしかし。その向きは、たった1週間で180度変わってしまった。その舞台裏には何があったのか? ネットを中心に巻き起こる「3冠」の声に対する陣営のアンサーとともに、牡馬クラシック第1弾のメインキャストの“動き”をリポートする。
吹き荒れた春の嵐…そして1週前
足音が近づいても、春一番が吹かなかったクラシック戦線。きさらぎ賞=サトノシャイニング、共同通信杯=マスカレードボール、弥生賞=ファウストラーゼン、スプリングS=ピコチャンブラック、若葉S=ジョバンニ。主要レースの勝者は2歳王者に敗れた馬ばかりで、走らずとも評価が上がる主役。それが飛躍してネットを中心とした世論では「クロワデュノール3冠」の声も聞かれる。
ライバルを下したパフォーマンスは確かに強烈だった。サトノに競り勝った東京スポーツ杯2歳Sは深管痛の影響で乗り込めない期間が生じ、馬体重24キロの大幅増という完調手前でのV。その他の4頭を退けたホープフルSは「何が心配かと言えば(直線を左手前で走るのが望ましい)初めての右回りの中山コースだった」(斉藤崇師)が、どこまで行っても縮まらないと思わせる2馬身差をつけた。「しっかり手前を替えましたし、右手前の方が好きだけど左手前でも走れる」(同師)ことを証明。勝負づけは済んだと解釈されるのも、一理ある。
そんな絶対王者に突如春の嵐が吹き荒れたのが、2日の2週前追い。併せ馬で遅れた姿に「大丈夫か?」とアオられる。食いが細く、攻めた調整が進められないことに陣営は首をひねるが、策を講じて週末(6日)には上級馬と3頭併せを敢行。そのかいあって9日の1週前追いでは、馬なりで攻め駆けする僚馬に楽に先着。悪くない…のではなく、主戦・北村友の感触は大きく上回った。
「1週間たって“さすがだな”と思いました。4コーナーから直線に向かう時の反応、動き出した時の体の使い方が良く、時計(ウッド6ハロン81・1ー36・4ー10・9秒)も思った通りで言うことがありません。以前は手前をコロコロ替えていたのがそういう面もなく、今日の追い切りが“今までで一番良かった”です」
その変貌には「張りが出て、自分で体をつくっているのを感じます。日曜(6日)に追って馬にスイッチが入ってきましたし、ここへきて食べるようになっています。“いい状態で出せそう”という感じになりました」と指揮官にも、安堵の表情が浮かぶ。突風をすぐさま追い風に変えてみせた。

一番の強みは「心肺機能の高さ」だが…
その上昇気流に乗れば、あとは自らの力を示すのみ。陣営がデビュー前から一番のセールスポイントと考えているのが「心肺機能の高さ」だ。牧場で取られたデータから“この馬はすごい”と報告を受け、実際に追い切っても息が乱れず「やっぱりすごい」。師の第一印象はそのまま今に継ぐ。
一方で、実は新馬戦のレース後、主戦は早めに動いて逃げ馬との切れ味勝負を嫌ったコメントを出したことがある。
その真意を、師は前向きにこう代弁する。「心肺機能を評価していますが、上がりは新馬戦(3ハロン33秒8)も東スポ杯(同33秒3)も速く、瞬発力がないわけではないんです。他にも優れているところがある中で、“一番の強みはそこじゃないんです”という認識です」。例えるなら、何でもできる優等生に「苦手科目は何ですか?」と聞くようなものだろう。
瞬発力勝負にも対応できて左回りが良く、スタミナもありそう…。競馬の祭典、そして秋の淀と、先の先まで向いた末に結局、冒頭の世論と同じ考えに立ち返ってしまうのだが…。「まだ早いですよ。1つも勝っていないですし、せめて、もし2つ勝つことができてから…でお願いします」。送り出す側の正直な心境だ。
未対戦組の力量や他馬の成長度も見える皐月賞で、どんな答えを導くか――。満点回答の予行演習を済ませた中山に、進化した姿で登場する2歳王者。3冠は一旦置いておいて、楽しみは一つずつ。まずは第一関門での「オール5」の走りを、とくと堪能しよう。

著者:和田 慎司


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