〝戦国時代突入〟か。6月から2歳戦がスタートし、早くも1か月半が過ぎた。世代最初のJRA重賞となった16日のGⅢ函館2歳Sではビッグアーサー産駒のブトンドールが勝利。父系をさかのぼれば、サクラバクシンオー→サクラユタカオー→テスコボーイの名があり、貴重な父系の継続をつなぐ快挙となった。

 先週時点で新馬戦は53鞍、未勝利戦が19鞍行われ、計72頭の若駒が勝ち上がった。まだ中〜長距離の番組が少なく、芝の62レースに対し、ダートは10レースと偏りが見られるものの、計53頭と多岐にわたる種牡馬が勝ち馬を送り出している。

躍進が目立つ新種牡馬勢

世代最初の新馬勝ちを決めたサトノダイヤモンド産駒ダイヤモンドハンズ

 現時点での勝利頭数1位はエピファネイアの5頭。2位タイは3勝でダノンバラード、キズナ、ハービンジャー、シルバーステートの4頭が並んでいる。大きな波乱もないように思えるが、注目したいのは新種牡馬の2頭が次位にランクインしている点だ。

 2018年のGⅠ宝塚記念を制したミッキーロケット(父キングカメハメハ)は2歳新馬の開幕週に行われた6月5日の中京芝1400メートルでジョウショーホープが産駒初出走初勝利を決めると、9日には福島1200メートルの未勝利をハンデンリリーが勝利。前者は4番人気、後者は新馬9着後の6番人気でV。2頭とも戦前の評価を覆す快走を披露している。

 一方で、すでに繁殖実績を評価され輸入種牡馬として導入された英GⅠ2勝馬デクラレーションオブウォー(父ウォーフロント)の産駒たちはこの世代でこれまで〈2・3・0・6〉。ロードディフィート(未勝利=東京芝1400メートル)、タマモブラックタイ(新馬=小倉芝1200メートル)の他に2頭が新馬で2着を確保しており、軽快なスピードと仕上がりの早さを大いにアピール中だ。これら2頭の新種牡馬は大本命とされていたわけではなかっただけに、血統の難しさが伝わってくる。

 それでも、前評判が高かったディープインパクト直子・サトノダイヤモンドの産駒は世代最初の新馬戦となった6月4日の中京芝1600メートルをダイヤモンドハンズが1番人気に応えて順当に勝利。GⅠ2勝(16年有馬記念、菊花賞)の父の名に恥じない走りを見せた。同馬は9月3日のGⅢ札幌2歳Sへの参戦が決まっており、早くも重賞制覇への期待が高まる。また、同じ冠を持ち、16年香港ヴァーズ&17年宝塚記念を制したサトノクラウン(父マルジュ)の産駒もクラックオブドーンが6月5日の2歳新馬(東京芝1400メートル)で初出走初勝利を決め、こちらも順風満帆の滑り出しとなった。

 新種牡馬の躍進はこれだけにとどまらない。社台スタリオンステーションに導入されたマインドユアビスケッツ(父ポッセ)の産駒は勝ち上がりに約1か月を要したが、10日の未勝利(函館ダート1000メートル)をワタシダケドナニカが勝利。ドバイゴールデンシャヒーンを連覇した父が得意とするダート短距離での初星は血のなせる業か。他にも、18年に春秋スプリントGⅠを制覇したファインニードル(父アドマイヤムーン)、父ハーランズホリデーから抜群のスピードを受け継ぐシャンハイボビー、米GⅠ3勝のビーチパトロール(父レモンドロップキッド)、スプリンターズSを連覇したレッドファルクス(父スウェプトオーヴァーボード)といった新種牡馬の産駒が次々と勝ち上がっている。

意外な活躍を見せる〝非GⅠ馬〟

ロンドンプランはグレーターロンドン産駒初出走初勝利を決めた

 ここまで名が挙がった種牡馬たちはいずれも現役時代にGⅠを制覇しており、ある程度の実績を残しているが、〝非GⅠ馬〟の子たちも結果を残しているのが血統の面白いところ。無傷で1997年のGⅢファンタジーSを制したロンドンブリッジを母に持つディープインパクト産駒グレーターロンドンは18年のGⅢ中京記念しか重賞実績がないものの種牡馬入り。出身の下河辺牧場だけでなく、他の牧場からも繁殖を集め、19年は65頭に種付けしている。その中から3日の小倉芝1200メートルでロンドンプランが産駒初出走初勝利を達成。父と同じ下河辺牧場生産で同牧場所有馬ということもあり、関係者の喜びは相当なものだっただろう。

 そして、16日には小倉芝1200メートルの新馬戦でヤマカツエース(父キングカメハメハ)産駒のタガノタントが勝利。またも新種牡馬の産駒が勝利をつかみ取った。ヤマカツエース自身は重賞5勝を挙げたが、GⅠは17年の大阪杯3着が最高で手が届かなかっただけに、必ずしもGⅠ実績がなくても産駒が走ることを証明して見せた。

 もう1か月半、まだ1か月半…。父ディープインパクト×母父ストームキャットの配合で活躍を本命視されたラヴズオンリーユーの全兄リアルスティール産駒こそ、2着2回、3着3回と初勝利はお預けとなっているものの、戦いはまだ始まったばかり。すぐに明確な傾向が出るわけではなく、今後も新たな発見やサプライズが相次ぐはずだ。新しい血が競馬をより魅力的に彩っていくのは間違いないだけに、今後も2歳戦線を注意深く見守っていきたい。

著者:東スポ競馬編集部