道路交通法の改正により4月1日から、全ての自転車利用者に対しヘルメット着用の努力義務が課せられた。約1カ月が経過したが、ヘルメットを着用している人の姿はまばらなのが現状だ。青葉警察署では「強制ではないが自分の身を守るために、ぜひ着用してほしい」と呼び掛けている。

これまでは13歳未満の児童や幼児の保護者に対し、子どもが自転車に乗る際にヘルメットを着用させるという努力義務が課せられていた。今回の法改正では、着用の対象が全ての自転車利用者に拡大されたが、罰則規定はない。

致命傷の7割は頭

神奈川県警によると、過去5年間に県内で自転車乗車中に亡くなった人は72人。そのうちの72%にあたる52人が頭部に致命傷を負っている。また、警察庁の資料によれば、ヘルメットを着用していなかった人の致死率は着用していた人に比べ約2・2倍となっており、頭部負傷が重大な事故につながりやすいことが確認されている。

「努力義務のため強制はできないが、ヘルメットの着用はぜひ検討してほしい」と話すのは青葉警察署交通課の杉山裕紀課長。

坂道が多いこともあり、自転車自体が少ないとされる青葉区だが、同署管内での自転車に関する事故件数は2019年から22年まで、126件、116件、120件、110件とほぼ横ばい。交通事故件数に対する割合も20%前後で推移している。死亡事故こそ0件だが、4年間で重傷事故は31件、軽傷事故は413件となっている。

「頭部は人体の高い位置にあり重いため、事故の際にも地面や車のフロントガラスにぶつけやすい。命が助かっても後遺症の恐れなどを考えると、頭を守ることは大切」と杉山課長はヘルメット着用の重要性を呼び掛ける。ただし、着用により髪型が崩れることや、自転車を降りた後の収納問題などもあり、特に大人世代に広がっていないのが現状だ。杉山課長は「頭部に致命傷を負った人のうち、6割が40歳以上というデータもある。5月は自転車マナーアップ強化月間。啓発活動に力を入れていきたい」と話している。

品薄で手に入らず

一方、努力義務化によりヘルメットが品薄になり、手に入らない状況も続いている。つつじが丘の自転車販売店「arcacycle」の前原智店長によれば、昨年末に義務化が発表された際には全く売れなかったそうだが、義務化直前の3月末に急に買い求める人が増え、現在は海外製の高級ヘルメットを除き大人用は完売。次の入荷も5月末になる予定だという。前原店長は「確実に入手するには予約いただければ」と話している。