神奈川県内にある建設系の学科を有する工業高校6校と、一般社団法人神奈川県建設業協会(松尾文明会長)が協働で作成した中学校向けの学校・業界紹介冊子がこのほど完成した。9月11日には、表紙デザインコンクールの表彰式が、県立向(むかい)の岡(おか)工業高校(堰)で開催された。
近年、入学希望者の減少が顕著に続いていることを受け、向の岡工業の居石(すえいし)博幸校長が部長を務める県工業高校工業部会建設工芸専門部が同協会に対し、高校受験を控える中学生向け広報誌の協働作成を今年の春に提案。建設系工業高校の卒業生が業界の担い手不足を救う「金の卵」と考える同協会も、入学者の減少に歯止めをかけたい思いがあったことからこれを快諾し、役割分担を決め7月中旬に完成した。
冊子はA4判37頁フルカラー。『TheMeister―ザ・マイスター―神奈川県の工業高校で建設を学ぶ!』と題し、神奈川工業・磯子工業・向の岡工業・横須賀工業・藤沢工科高校・小田原城北工業の6校を案内するページを各校が、建設業の仕事内容ややりがい、中学生や保護者の不安を解消する記述などを紹介するページを同協会が担当した。「単なる学校案内にとどまらず、在校生の紹介では各生徒の出身中学を記載することで中学生により身近に感じてもらえるようにした。各校の指導教員も紹介し、工業系高校や建設業の魅力をできるだけわかりやすく伝えられるよう工夫した」と居石校長は話す。
「興味を持って」
多くの生徒が登場する冊子のため、表紙と裏表紙についても在校生の活躍の場の一つと位置付けてデザインを募集し、約20のアイデアが寄せられた。表紙を飾る最優秀賞には藤沢工科高校総合技術科総合デザイン系に通う石坂芽唯蘭(めいら)さん(2年)、裏表紙の優秀賞には向の岡工業建設科建築コースの袴田(はかまた)霧華(きりか)さん(3年)が選ばれた。
学校でさまざまなデザインを学ぶ石坂さんはスマホアプリで作画。表彰式で登壇すると「中学生に工業高校の建設系とはどんなものなのかを知ってもらいたいと思った」と述べ、建設のイメージや言葉の意味を考えた上で「背景に建物などを描き人物のイメージを組み合わせた。大きな図面を広げて何か新しいものをつくろうとしているところを描いた」とデザインに込めた思いを語った。
袴田さんは、建設現場で作業をする女性の姿を、シャーペンやボールペン、色鉛筆などを使って描いた。取材に対し、「賞はもらえないと思っていたのでうれしい。建設現場でも女性が活躍できるよという思いを込めた」と回答。「住宅や公園の設計士になりたい」と将来の夢を語り、「建設業も意外と楽しいので、興味を持ってくれたらいいな」と話した。
同協会の松尾会長は、「東京五輪が終わっても首都圏には建設需要があり、人材をどう確保しようと日頃から悩んでいる」と業界の現状について語り、「建設業は家や道路など人の生活を支えるものをつくる仕事。ぜひ冊子を読んで中学生に興味を持ってもらい、業界に入るきっかけになれば」と述べた。
冊子は各校の説明会などで配布されるほか、県内中学の進路指導教員などにも配られるという。