どのような場合でも、「うちの社員は無能だ」といったことを経営者が口にすることは、愚かなことです。その採用過程はともかくとして経営者が最終的に選んで採用しているのです。にもかかわらず、「うちの社員は出来が悪い」などと公言するのは、天に唾(つば)するようなものでしょう。

つい最近、このようなことがありました。某IT企業の社長が「うちの社員の出来が悪い。実力がいま一つ。どうしようもないんです。だから、業績がなかなか伸びないので悩んでいます」と言う。「お宅の社員の採用の最終決定者は誰なんですか」と尋ねると、「いや、実際の採用は人事担当役員です。私のところには書類が回ってくるだけ。それをぱらぱらと見て、まあ決定ということです」とのこと。そこで次のように伝えました。

「ならば、最終決定は社長ご自身ということになりますね。それなのに、ウチの社員はダメだというのは、社員がダメではなくて、社長であるあなたがダメだということになりますよ。人材を見抜く力が、役員の方にも、社長であるあなたにも、なかったということになりますからね」

社員をダメにしているのは社長

「うちの営業マンは能力が低い」「うちの研究開発陣は無能」などと平気で口にする経営者が多いのは、なぜなのでしょうか。謙(へりくだ)ってというか、謙遜というか、そのような思いから言っている場合もあります。さほど本気で言っているわけではないのかもしれません。しかし、もし社長がそのようなことを言っていることを就活をしようとしている優秀な学生が耳にしていたら、彼は、その会社に応募しようとは思わないでしょう。

業績が上がらないのは従業員の能力不足と言いたくなる気持ちはわかります。しかし、客観的に見て、社員をダメにしているのは、ほとんど社長です。社員は、この会社で一生懸命働いてやろうと思って入社してきているのです。もちろん、すべてではないにしても、ほとんどの社員は、入社時点ではそのように思っているものです。そういう社員が入ってきているのに、そのやる気をなくさせているのは誰か。結局は、上司、幹部、社長なのです。

では、どうすれば、社員に一層の実力をつけさせることができるのか。