大企業と中小企業の間には歴然とした賃金格差がある。有能な人材の流出を防ぐために「賃金制度改革」に取り組む中小企業は多いが、それがかえって社員のモチベーションを下げて組織に悪影響を与えるケースも少なくない。

『小さな会社の〈人を育てる〉賃金制度のつくり方』の著書もあるコンサルタントの山元浩二氏は、失敗の原因を「賃金制度の導入手順や目的を間違えているから」だと指摘する。

「経営計画」と「人事評価制度」

1. 379万円
2. 500万円
3. 665万円

この3つは何の金額だと思いますか。正解は、以下のとおりです。

1. 従業員100人未満の中小企業の平均年収
2. 従業員1000人以上の企業の平均年収
3. 東証一部上場企業の平均年収

(国税庁 民間給与実態統計調査、東京商工リサーチ調査データより)

中小企業と東証一部上場企業では約1.8倍、286万円もの年収差があります。また、従業員1人当たりの労働生産性(年間平均)は、大企業が1,323万円、中小企業が553万円で、その差は実に約2.4倍となっています(2018年版「中小企業白書」より)。

大企業と中小企業の年収格差、生産性格差が生まれる原因は一体何なのでしょうか。さまざまな理由があると思いますが、私が19年にわたり企業の人材育成の仕組みづくりを支援してきた経験からわかったことがあります。それは、従業員100人未満の会社では、「経営計画」と「人事評価制度」がない、またはうまく運用できていない会社がほとんどだということです。

もちろん、中小企業にも大企業の社員に負けない優秀な人材がいます。多くの会社は、彼らの流出を防ごうと現行の賃金制度を見直したり、成果配分を強めて賃金格差をつけたりして、モチベーションアップを図ります。

しかし、そのような改革は低くない確率で失敗します。私は、その原因は現場のリーダーである中間管理職にあると考えていますが、その理由を説明する前に、コンサルタントとしての私の経験をお伝えします。

コンサルタントとして駆け出しのころ担当した中小企業での出来事です。その会社では社員の昇給や賞与を社長が決めていましたが、評価基準が必ずしも社内で共有されておらず、賃金や賞与に対する社員の不満がくすぶっていて、一部には社長に直談判するような社員もでてきていました。