7月に都内で開催されたあるイベントで、有機ニンジン100%というジュースを飲んで驚いた。

水も砂糖もいっさい入っていない、自然の甘みとまろやかな舌触り。一般的なニンジンジュースにある、苦くて青くさいというイメージが根こそぎ覆される。

このニンジンを作っているのは、渋谷から80分の直行バスで行ける一風変わった“農場”。千葉県木更津市にある体験型施設「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」だ。

バスを降りた先に見えるのは、約9万坪(30ヘクタール)にも及ぶ広大な敷地。すり鉢状の特徴的な土地の中に、畑や水牛の牧舎などが立ち並ぶ。

ここに、タイプの異なる2つの“有機栽培の畑”がある。1つは市場を相手にビジネスをするための大規模な畑、もう1つは少人数の来客者を相手に有機の価値を伝えていく小規模な畑だ。

2つの畑が、それぞれに挑むのは“有機栽培の限界”だ。

かつてに比べれば日本でも普及した有機野菜だが、それでも意識の高い人たちがこだわって作る高価なもの、と縁遠く感じる人も多いかもしれない。生産上、ビジネスとしての難易度も高く、夢破れ、廃業する人は現在でも少なくない。

こうした心理的な壁、ビジネス上の壁に挑むのが、クルックフィールズの人々だ。集まったメンバーはいずれも30代の男女。後述するが、ここまでのキャリアも実に多様だ。木更津を訪れ、彼らの挑戦に追った。

有機農場を運営している企業は…

ニンジンや枝豆などの希少品種を数トン単位で生産している約10ヘクタールの農地。「オーガニックファーム」と名付けられたこの場所でリーダーを務めるのは、伊藤雅史さん(34歳)。

伊藤さんはもともと「農業の人」ではない。この農場にくる10年ほど前は、外苑前にあった「クルックキッチン」のレストランでアルバイトをしていた。

現在は「代々木ビレッジ」のレストランとなっているが、ここはMr.Childrenなどのプロデュースも手がけてきた音楽プロデューサーの小林武史さんらの会社KURKKUが運営している。デザイン、内装、レストランなど、日本を代表するクリエーターたちがこだわりを追求した商業施設だ。