「テレワークやっていると、生産性が下がるじゃないですか」。ある社長から言われ、驚いたことがある。さらに社長は「でも、今どきテレワークをやらないと言ったら、若くて優秀な社員を採用できないので、どうしたらいいのかと思って」と付け足す。

たしかに、日本生産性本部が今年5月におこなった調査によると、テレワークを始めた人のじつに66.2%が「生産性が下がった」と答えている。この調査結果だけを見たら、テレワークは生産性が下がると思い込むのもムリはない。しかし当然のことながら、それは思い込みであろう。

オフィスにパソコンが普及し始めたころのことを覚えているだろうか。当時オフィスワーカーにパソコンが割り当てられ、その後しばらくして「生産性が上がった」「業務効率がアップした」と答えた人は少ない。

会社から強制されたからパソコンを使うのであって、そうでなければ、どうしてこんなものを使わなければならないのだと不平を言う人もいた。電子メールが普及したころもそうである。覚えづらいメールアドレスを打ち込んで、文章でコミュニケーションするスタイルは、当時多くの人から受け入れられなかった。

生産性アップに効果があったという意見も

テレワークのケースでも同じだ。テレワークに「慣れていない」から生産性が下がっただけであり、今後テレワークという働き方に慣れ、創意工夫することによって受け止め方は変わってくるだろう。

実際に、2017年の総務省の調べによると、テレワークの実施企業のうち、82.1%が生産性アップに効果があったとも評価している。この時期にすでにテレワークを実施するような人や組織は意識が高い。だから緊急事態宣言が出たからしかたなくテレワークを始めた人とでは、取り組み姿勢が違って当たり前。仕事のパフォーマンスに違いが出てもおかしくはない。

そもそも生産性が低くなるというのであれば、なぜ働き方改革関連法が2019年に施行されたのか。職場の生産性を高めるための重点施策として「働き方改革」があり、テレワークは「働き方」を変えるうえでの目玉というべき考え方だ。テレワークは生産性を上げるための新しい働き方なのだから、「テレワークすると生産性が下がるじゃないですか」といった考え方は誤解だとも思える。