研修の休憩中にアイスを食べていた新入社員を注意した講師。一見、正しいことをしたように見えるが後日、人事部からお叱りを受けたのはなんと講師のほうだった。彼が犯した過ちとは? 産業カウンセラーの渡部卓氏による新書『あなたの職場の繊細くんと残念な上司』より一部抜粋・再構成してお届けする。

以前、研修の休憩中にアイスを食べていた新人を強く注意した講師がいた、というネットの記事を見かけました。勤務中なら缶コーヒーぐらいにとどめておくべきで、アイスとは何事だという論理です。

新人はその場でも「おやつをとるのがいけないのですか」と反論したようです。後日談として、その講師は人事部から呼び出しを受けたとのことでした。

この話を読んで、私は自分の体験を思い出しました。それは海外でのマーケティング関連の企業研修だったのですが、外部の専門講師が毎日、アイスの差し入れをしてくれたのです。講義の内容も有益で、いまでもそのアメリカ人講師の顔が思い浮かびます。

何を注意するにも「配慮」が必要な時代

アイスを注意した講師からすれば、研修中にスマホをイジったり、居眠りをする新人が目についてきたので、気を引き締めるためにガツンと言ったのかもしれません。私も気の毒に感じる面もありますが、昔の感覚で強く叱責すると、時にベテラン講師でも一大事になります。

たとえば、遅刻が厳禁なのは、いまも昔も変わらない価値観です。それでも、言い方には配慮が必要です。「社会に出たら、遅刻をした時点で終わりだぞ!」なんて脅すような言い方はNGです。ましてや、遅刻した若手社員をその場で叱責するにはよほどの配慮が必要でしょう。

ある大手家電メーカーの新人研修の例を紹介します。外部の講師を呼ばずに、海外留学の経験もある若手の有望株に新人研修を任せました。初日、2日目と何事もなく過ぎましたが、3日目のある講義の際に、ひとりの新人が遅刻をしてきました。

みんなが着座している中、遅れて入ってきた彼に対して、講師はその場でつい叱責してしまったのです。といっても、怒鳴ったりはしていません。「遅刻はダメだぞ。次から遅刻はしないように」程度の注意だそうです。