長時間労働やハラスメント、雇い止めなど、働く人たちが直面しているさまざまな問題。これらを解決するために役に立つのが、法律だ。

労働関連事案のエキスパートである弁護士・岩出誠氏が職場におけるトラブルを解決する糸口を法律の観点からまとめた『働く人を守る! 職場六法』の一部を抜粋、再構成してお届けします。

Q)会社から感染防止のためのフェイスシールドを貸与され、「着用しないで働いた場合、業務命令違反で懲戒処分する」と言われました。うっかり付け忘れても懲戒処分になりますか?

A)会社には就労中の服装について、ある程度指示する業務命令の権限があります。業務命令の内容が就業規則などに定められている場合には、働く人は懲戒(叱責)される可能性があります(1)。仮に、フェイスシールドの着用まで明記した詳細な規定がなくても、着用を求めることは働く人の感染防止を図るための合理的命令であり、命令自体は有効です。しかし、就業規則に懲戒規定がなければ、働く人を懲戒処分することはできません(2)。

「仕事中にマスクをするように」と言われた場合も同様で、会社には働く人の健康について安全を配慮する義務があり(3)、感染予防のためのマスク着用を義務づけているとしたら業務中の服装の指示とみなされます。マスクの購入費用も、厳格には会社支給の制服と同様に「労働者に負担をさせる場合」として就業規則の根拠が必要です(4)。しかし、風邪予防のためにマスクの自費での購入と着用を求めるのは合理的命令の範囲内と思われます。

(注釈)
(1)労働基準法第89条 (2)労働契約法15条 (3)労働契約法5条 (4)労働基準法89条5号

「業務命令だ」と無理難題を押し付けられても、約束された範囲を超えた命令や実現不可能な業務命令は無効。就業規則を確認しましょう。

就業規則にないことを働く人に強要できない  

業務命令の中には約束された範囲を超えた命令や実現が難しいものもありえます。そういった場合に問題となるのは、実現不可能な仕事の要求は深夜までの残業や休日出勤につながるなど、働く人に大きな負担をかけることになりかねないということです。働く人を労働基準法の基準を下回るような状況から守るための就業規則を作ることが求められています。