小中学校や高校の児童・生徒への、教員によるわいせつ行為が後を絶ちません。現行法ではわいせつ行為で懲戒免職を受けても、最短3年で教員免許の再取得が可能で、教員はふたたび教壇に立つことができる状態です。また、教員免許の再取得不可を目的とした法改正も検討されていますが、今国会では提出が見送られました。そんななか、当事者たちは今どのような思いを抱えているのでしょうか。被害にあった子どもの保護者団体への取材(前編)と、わいせつ行為をした加害者側の調査を続ける奈良大学の今井由樹子准教授へのインタビュー(後編)から、問題の本質に迫ります。

奈良大学の社会学部心理学科で教鞭を振るう今井由樹子准教授。今井氏が今取り組んでいるのは、加害者への調査だ。

今井氏は22年間にわたり少年警察補導職員として、非行の最前線に携わってきた。そこから臨床心理学を学び直し、スクールカウンセラーとして学校現場に入る。長年、『性加害者となった教員』への聞き取り調査を続け、要因やメカニズムを解明し予防策を探ってきた。そんな彼女の思いも被害者やその家族と同様に「被害者を生みたくない」というものだった。

「加害者の目線」で考える人は少ない

「被害者の支援に取り組む人は多いけど、加害者の目線で考える人は少ないでしょ? 何より警察時代に感じたのは、虐待や家庭環境など“被害体験”から非行に走る子どもが多いという事。非行という行為は迷惑をかけるので『加害者』でもあるけど、同時に『被害者』という側面も持ちます。行為をやめるには、加害者と被害者、どちらの考えも知らなければならないと気付いたのです」(今井氏)

加害者調査を続ける奈良大学の今井准教授(写真:筆者撮影)

被害者支援とは違う“加害者心理”からわいせつ教員問題と対峙する今井氏が、警察と学校、両方の現場経験を生かし、現在完成を目指しているのが『教員の性行動セルフチェック表』だ。

今井氏は、中部地方の公立小中高校と特別支援学校の教員計875人にアンケートを実施。並行して十数名の“性加害教員”にも同様の回答を受け、その結果を分析する。