東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長で元総理大臣の森喜朗氏が、JOC(日本オリンピック委員会)の臨時評議員会で行った女性差別的な発言が、波紋を呼んでいる。中でも、女性蔑視に当たる発言について、国内はもちろん海外のメディアも注目し批判している。こうした失言は、森氏1人にとどまらない問題をはらむものだ。失言の背景には、何が隠れているのか。そして私たちは、何を求めるべきなのか。この機会に掘り下げたい。

問題となった森氏の発言部分は、次のようなものだ。

「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげて言うと、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度規制をしないとなかなか終わらないので困る、と言っておられた。誰が言ったとは言わないが」。

公の場では本音で言わない社会

今回の発言の背景には、森氏が男性ばかりの社会で暮らしてきたことがあると、ジェンダーと政治学が専門の上智大学法学部の三浦まり教授は分析する。

「森さんは、場をわきまえた男性理事は会議で発言しないのに、女性は比較的、積極的に多様な発言をしている、と閉口しておられるのでしょうね。森さんはこれまで、男性ばかりのホモソーシャルな社会で暮らしてきた方です。そういう社会では、本音の話し合いは会食などの裏の会合で行い、公式の場では決まったことに皆が従う、という流れで物事が動いてきました。

しかし、今は世界的な潮流として、意思決定の場に女性を入れる流れがあるため、JOCでも必要に迫られ、女性理事を増やしたのでしょう。するとその中には、森さんからすれば意外で異質な、空気を読まない発言をする人もいる。そうしたノイズを排除したい、と思われたのではないでしょうか。もし彼女たちの発言が、森さんが歓迎するような内容だったら、『長い』などと言わないでしょう」

森氏は、2月4日に謝罪会見を開き、同日夜の『プライムニュース』(BSフジ)に生出演し、釈明を行った。しかし森氏は番組で、海外メディアから批判が殺到したので、オリンピック開催をスムーズに行うために「撤回したほうが早い」と、判断したとを述べた。記者会見でも、記者の質問が続くといらだちを隠さなかった。失言に表れた女性蔑視の何が問題なのか、理解したうえで謝罪したようにはとうてい見えない。

政治家が差別的な失言をしては、謝罪会見などで丸く収め、話を終わらせる。そうしたことは、今までにも数えきれないほどあった。