日本の主要企業が続々と「ジョブ型」雇用への移行を打ち出している。求められる人材はどう変わるのか。とりわけ管理職に必要な資質・能力はどう変わるのか。『管理職3年目の教科書』の著者・櫻田毅氏が、「ジョブ型」雇用でも生き残る管理職の条件について解説する。

世界標準の「ジョブ型」雇用

日本企業の雇用システムが、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へと移行する兆しがあります。全体から見るとまだ一部ですが、富士通、日立製作所、KDDI、三菱ケミカルなどがその方針を打ち出しています。

背景には、第4次産業革命と呼ばれる技術革新と社会変化において、専門性の高い人材の確保なしには生き残ることはできないという経営者の危機感があります。

これまでの日本企業は新卒一括採用で事後的に配属を決め、その後も異動やジョブ・ローテーションを通じた幅広い経験によって、包括的な視野と社内人脈を築いていく人事政策、すなわち人に仕事を当てはめるメンバーシップ型雇用を採用してきました。

ただしこれは、終身雇用と年功序列とともに、高度成長期における規模拡大の事業戦略に対応した、人材を丸抱えで確保するための日本特有のシステムです。

欧米をはじめとする日本以外の国では、仕事に人を当てはめるジョブ型雇用が一般的です。職種と役職ごとにジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で仕事の内容を定義して、その要件に適した人材を新卒、中途の区別なく採用します。採用後も、同一職種内の昇格はあっても、原則として本人の同意なしに他の職種へ異動することはありません。

そういう意味で、一部の日本企業のジョブ型雇用への移行は、環境変化に適応できなくなってきた古い時代の日本特有のシステムが、世界標準へと修正されていると考えることができます。前出の富士通や日立製作所などのグローバル企業の経営者も、「今回の移行は世界標準に合わせるためでもある」と明確に述べています。

さらに、専門性の高い人材を確保するために、中途採用者の増加や能力に応じた報酬体系の大胆な見直しも行われています。NECは新入社員でも高い専門性があれば1000万円の年俸を支払う制度を、富士通は高度なデジタル人材に対して最高で4000万円を支払う制度を導入しています。

いま日本企業に起きているこのような変化をひと言で表すと「専門能力を基準とした人材価値の再評価」です。ジョブ型雇用はその象徴的な例であり、これからは、スタッフか管理職かにかかわらず、全社員が特定分野の高い専門性を有しているスペシャリストであることが求められているのです。