資本主義が人類史を通じてどのように発生・発達してきたのか、そしてその末に何が起きているのか―――。新著『アイデア資本主義』では、資本主義の最先端について、文化人類学ならではのミクロな視点から考察しています。本稿では同書から一部を抜粋・編集しお届けします。

資本主義の最先端「アイデア資本主義」とは

一昔前であれば、事業を始める前に資金を集めるのは非常に困難でした。銀行から融資を受けようとしても、基本的にアイデアに対して融資が下りることはありません。何年か実際に事業を営んで売上や利益の実績を作ってから、かつ自分の資産や信用を背景に個人保証をしたり、会社の資産を担保にしたりして、やっと融資が下りるというのが一般的な形でした。

もちろんこうした状況でも事業に先立つものとしてアイデアは存在しました。しかし先に例示したように、アイデア自体がお金になることはありませんでした。もともとアイデアは単独で存在しているというより、生産手段の前段階として存在していたのです。

しかしいまや、アイデア自体を売り込んで出資を受けることができる時代になっています。もともとアイデア自体がお金になることがなかったのは、資本の希少価値が相対的に高く、資本の側が収益性の高い生産手段を選ぶ側だったからです。その状況においては、資金を欲する人はなんとかして生産手段を具体化して、その収益性の高さを示してみせる必要があります。

一方で、現在は国債金利の低下に見たようなカネ余りが常態化しています。これは、資本が行き場をなくし、コモディティ化しているということです。資本の希少価値が低いのです。そのため、資本同士が競合しながら稼げる投資対象へと向かっていっており、その競争は生産手段についての青写真、すなわちアイデアの段階で他の資本を出し抜かなければ勝てないほどに激化しています。

アイデア資本主義とは、アイデアが生産手段の前段階としての位置づけを脱して、アイデアそのものが独立した投資対象になっている状況を指します。アイデア資本主義は、伝統的なフロンティアが消滅したことによって、モノがあり余り、カネがコモディティ化する中で、それでも利潤を得ようとする資本の運動の果てに生じた現象です。アイデア資本主義においては、アイデアを生み出す人のアタマの中が、資本主義にとってのフロンティアであると言えます。