「数学が苦手で文系を選択した」という声がよく聞かれる。一方でデータサイエンス、AIなどがビジネスの重要なテーマとなり、数学的な素養が求められるようになった。数学が苦手だった文系出身者たちには、「これから、自分たちが損をするようになる?」という危機感が広がっている。『数学的に話す技術・書く技術』(曽布川拓也/山本直人著)は、ツールとしての数学の本質に触れつつ、ビジネスや社会との接点を明らかにしている1冊である。著者の1人、数学者で数学教育の専門家でもある曽布川拓也氏(早稲田大学グローバルエデュケーションセンター教授)が「物語」を読むように「数学の世界」を学び直すことの重要性について述べる。

小1の足し算だって本当は手ごわい

小学校1年で扱うこんな問題を考えてみましょう。

【もんだい】
あかいチューリップが3本、しろいチューリップが1本、きいろのチューリップが2本あります。ぜんぶで何本でしょう。
しき:3+1+2=6 こたえ6本

多くの人は特に疑問も持たずに通り過ぎるのだろうと思います。しかし次はどうでしょうか。

【問題】
鉛筆が3本、スプーンが1本、傘が2本あります。全部で何本でしょう。
式:3+1+2=6 答え6本

似たような問題なのですが、おそらくこちらには違和感を覚える人が多いのではないかと思います。どこがどう違うのでしょうか。

最初の問題に戸惑った小学校1年生以来、算数・数学とは一切縁を切ったという人の話を聞いたことがあります。2つめではなく最初のほうです。「あかいチューリップ」は赤い。「しろいチューリップ」は白い。それを一緒にして考えるのはおかしい、と。

子どもは大人たちの思いも寄らないことを疑問に思ったり不安を感じたりします。大人にとっては当たり前のことでも子どもにとっては大問題だったりするのです。子どもがなにかモヤモヤした気持ちを抱えている。そんなとき大人はどうすべきなのでしょう。