「『聞く力』は誰よりも優れている」という岸田文雄首相の発言もあってか、今再び、「聞く力」が注目されている。しかし3000人以上の取材経験を持つプロインタビュアー、上阪徹氏によれば、話すことや聞くことではなく、「引き出す力」こそが重要だという。ではあらゆる職業やコミュニケーションに求められる「引き出す力」とはなにか? 上阪氏の著書『引き出す力――相手が思わず話してしまうひとつ上の「聞く力」』から紹介します。

「聞く力」より「引き出す力」

コミュニケーションに関する領域では、「話す力」「伝える力」が大いにもてはやされてきました。

しかし、どんなに「話す力」「伝える力」があったとしても、「聞く力」がなければ一方的なコミュニケーションになってしまいかねません。

またさらに言うと、話を「聞く」ことは、質問をすればできますが、相手の本音を聞くためには、「引き出す力」こそが、求められるのです。

もし、セールスでクライアントの持っている情報をもっともっと引き出すことができたなら、本当のニーズや課題を見つけられ、より的確な提案ができるかもしれない。

リサーチのインタビューで早いタイミングで初めて会う消費者から信用してもらい、感じていることをどんどん引き出せたとすれば、商品開発に大いに役立つでしょう。

なかなか心を開いてくれない部下から本音を引き出すことができれば、これまで以上に部下に寄り添ったマネジメントができる可能性がある。

ただ質問をして聞いていただけではできなかったことが、「引き出す力」を培うことによってできるようになるのです。

苦手な相手が思わず話してしまうには?

とはいえ、相性のいい相手から何かを引き出すのは、興味や関心、あるいはニーズが似通っている場合が多いので比較的簡単ですが、苦手な相手の場合は、どのようにコミュニケーションを進めたらいいでしょうか。

人には間違いなく相性というものがあります。「ああ、この人は自分に合うなぁ」と直感でわかる人もいれば、「この人は苦手なタイプだな」、と思ってしまう人もいる。それは致し方のないことです。

しかし、もし話を引き出したいのであれば、「ああ、苦手だなぁ」はその場で封印しなければなりません。なぜなら相手のことを「苦手だ」と思った瞬間に、相手にもその空気が伝わってしまうからです。

「あなたのことが苦手です」というメッセージを送ってくる人に、気持ち良く話をしよう、という人はなかなかいないのではないでしょうか。