自己肯定感の低い人は、自分が傷つかないために、さまざまな自己防衛策を講じますが、これが人間関係を難しくしていることが少なくありません。本稿では、自己肯定感の低さから人間関係に悩む人へ、なぜ「自分は他人から好かれない」と思ってしまうのか、心理療法士として長い経験を持つシュテファニー・シュタール著『「本当の自分」がわかる心理学』より一部抜粋・編集して紹介します。

自分の思い込みを他者に投影する

心理学における「投影」とは、「自分自身の欲求や感情といった眼鏡を通して、他者を認識すること」を意味します。不安や劣等感を抱いている人がその感情の眼鏡を通して相手のことを見ると、相手が自分よりも強く優れている存在に見えてくるのです。

誰でも、父親や母親との経験をしょっちゅう自分のパートナーに投影しているはずです。たとえば、なんでもコントロールしようとする母親に育てられた人は、「パートナーも母親と同じだ」と無意識に思い込んで、自分がパートナーからコントロールされているとすぐに感じてしまう可能性があります。私自身もケチで欲深くなると、「あの人も私と同じようにケチで欲深いはず」と思ってしまいがちです。

一方、私たちはポジティブな感情と願望も投影します。もし、私が嫌な思いをほぼまったくしない子ども時代を過ごしていたら、すべての人のことを自分の両親と同じように信頼できるいい人だと思い、お人好しになっていたかもしれません。

この「投影」は、認識に関わる心の働きであり、認識は、思考、感情、行動の基礎になります。あらゆるものが個人の認識にもとづいており、認識のプロセスは自動的に進んでいくため、「投影」によってゆがんだ認識をしているとき、本人ですらそのゆがみに気づきません。

ゆがみを省みることができたとしても、それは、ゆがんだ認識をしたずっと後です。私も自分が〝完全に間違った眼鏡〟で世界を見ていたことを、ある日突然、〝目からうろこ〟のように気づくことがあります。

ですから自分が傷つくのを避けるためにとる防衛戦略の中でも、「投影」は、他の権力志向や完璧主義にくらべて自分でも気づきにくいかもしれません。