気を遣ったつもりで、相手に余計気や時間を使わせているマナーというのは意外と多いもの。そこで、『反応したら負け』の著者である漫画家・コラムニストのカレー沢薫が、もはや負の遺産と化している「クソビジネスマナー」を題材に、「本当の気遣いとは?」を考える(※本原稿は、2020年に執筆されたものです)。

リモート界に進出した「クソビジネスマナー」

コロナウイルスの影響で「リモートワーク」が急速に広がり3カ月ぐらい経ったが、わずか3カ月のうちに「リモート悪ロ」「リモートセクハラ」など、リアルで起きているオフィス問題をリモートでも完全再現に成功しているという。道具を悪い方向に使うことに関してはやはり人間は他の追随を許さない。人類様の本領発揮といったところだ。

そしてもちろん「クソビジネスマナー」も、悪口やセクハラ如きに後れを取ってなるものかとリモート界に進出してきており、早速「上司より先に通信を切ってはいけない」など、円滑な業務をザラつかせにかかっている。

普通、礼儀作法やルールというのは、最初に話し合って決めるか、やっていく中で暗黙の了解として自然に出来ていくものだが、当然リモートワークマナーを協議して決めるなんてことはないし、リモートワーク自体広まってからわずかである。つまり、リモートワークマナーはほとんど根拠なく誰かが勝手に決めた、と言っていいだろう。

「柴犬肛門鑑定士」と名乗る人が「リモートワークの時は、相手が目線を定めやすいよう、あえて乳首が浮く服装をしましょう」と言っても誰も信じないが、現在はネットで「ビジネスマナー総書記」みたいな肩書きの人が「先に通話を切るのは失礼」などもっともらしいことを言ったら、それがすぐに真実のように広まってしまう。

しかし、ルールというのは増えれば増えるほどそれを守るための時間が浪費されるため、そういう新しい決まりを作ろうとする人間は「失礼クリエイター」「迷惑製造機」などと言われている。

もちろん、マナーがすべて無意味というわけではない。「敬語で話す」「3回目の取引までキスは待て」などの最低限のマナーは必要だ。