戦後日本は、なぜ高度経済成長を実現できたのか。手数料と物流という枠組みから世界史を捉えなおし、覇権国家の成立条件について論じた『手数料と物流の経済全史』を上梓した経済史研究者の玉木俊明氏が解き明かす。

高度経済成長と江戸時代からの遺産

経済はいったいどうして成長するのか。これをめぐって、歴史家のあいだでは大きな論争があった。

一つは、有名ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーがいったように、人々は禁欲し、勤勉な生活になったという主張である。もう一つはヴェーバーの論敵であるヴェルナー・ゾンバルトが主張したように、欲望の解放こそ、経済成長の原動力だという立場である。人々は贅沢な暮らしをするために働くというのである。

日本では、ヴェーバーの影響力が強かったため、禁欲的な勤勉性が現代の資本主義を生んだという主張がまだ多数派のように思われるが、この論の大きな問題点は、人々が禁欲したなら、商品は必需品を除いて購入せず、結果的に経済は成長しないという点にある。したがって、ヴェーバーではなくゾンバルトの意見こそが正しいといえる。

人々は、より豊かな生活を目指してたくさん働くようになったのである。それは、日本にも当てはまる。