人々の知識、スキル、能力などを指す「人的資本」への投資を増やすべきであるという考え方が注目を集めている。

一方で、そこには「企業で良く見られる人材マネジメント上の矛盾がある」と指摘するのは事業創造大学院大学の一守靖教授。最新刊『人的資本経営のマネジメント: 人と組織の見える化とその開示』から一部抜粋して再構成。全5回の連載第3回をお届けする。

企業における多様性を強化すると同時にすべきこと

組織メンバーの多様性(ダイバーシティ)の強化に多くの企業が取り組んでいる。

世界に50以上あるといわれている人的資本の測定と開示のあり方について検討している機関の多くが、組織における「多様性」の状況を開示すべきであるという見解を示している。

組織のメンバーが多様であるかどうかは、例えば年齢、性別、障害の有無、雇用形態、国籍などで把握する場合が多い。

【DE&I(ディー・イー・アンド・アイ)】

これまで長い間「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)」と呼ばれてきた概念が、15年ほど前から「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(Diversity, Equity & Inclusion)」と呼ばれるようになってきた。

ここでいう「Equity(公平)」とは、すべての人が同じ条件ではないという認識のもと、その不公平さを認識し、是正し、対処することを意味する。

同じ機会を平等に提供するだけではスタート地点からの不公平は解決されず、Inclusion(融合)につながらない。そのため、エクイティという概念が強調されるようになったのである。

イノベーションを生み出すため、あるいは顧客の多様なニーズに応えるために、企業は組織メンバーの多様化をますます強化すべきである。ただし、言うまでもないが、単に多様な人材を増やすことが企業の目的ではない。多様な人材を活かすためには、多様性を受け入れる体制も同時に強化しなくてはならない。