日米のビジネススクールで教鞭をとる牧兼充氏は、日本の経営学と世界の経営学との差を、身をもって感じている。世界では経営学とサイエンスの融合が進んでおり、実務家も実際の経営にサイエンスの手法を使って事業を成長させているという。具体的にはどういうことなのか。同氏の著書『科学的思考トレーニング』から、一部を抜粋して紹介する。

「学び」のキーワードは「学際研究」と「融合」

私は現在も日米のビジネススクールで教鞭をとっています。日本とアメリカの両方で教え続ける教員は多くないので、その点で私のキャリアはユニークと言えるでしょう。

その経験を通して、世界のビジネスプロフェッショナルが何を学び、どのように実務に活かしているかもつぶさに見てきました。グローバルで競い合う以上、これからは日本のビジネスパーソンにも同じ学びが求められているのは間違いありません。

ひと昔前まで、ビジネスパーソンがアカデミックな知見を学ぶとしたら、実務に役立つとされる経営学を選択するのが一般的でした。社会人向けのビジネススクールも「経営学を学ぶ教育機関」というイメージが強かったはずです。しかし今、世界における「学び」の潮流は変わりつつあります。キーワードは「学際研究」であり「融合」です。

私自身、分類上は「経営学者」と呼ばれていますが、実際に扱っている研究領域は、おそらく経営学ではありません。イノベーションやアントレプレナーシップを探究する多様な社会科学の研究手法を融合した「学際領域」であり、経営学の本流から外れても、科学的思考法を活用することにこだわります。

現在の「経営学」の研究は、2つのグループにわかれています。

1つは、戦略論や組織論を中心とした伝統的な学問として経営学を捉えるグループ。もう1つは、経済学、心理学、社会学の応用分野として経営学を捉えるグループです。後者のグループは積極的に他の研究領域とも融合を目指しています。