昨年10月、岸田文雄首相が「5年で1兆円をリスキリングに投じる」と所信表明演説で述べたことで話題になった「リスキリング」。とくに近年はChatGPTなどの生成AIの普及により、「人間の仕事が奪われる」ことが現実のものになりつつあり、それに対応するためのリスキリングはビジネスパーソンにとって、緊急の課題になっています。
日本のリスキリングの第一人者であり、『リスキリング【実践編】』の著者である後藤宗明さんに、AIに仕事を奪われる時代に必要なスキルについてうかがいました。
スキルの寿命を理解する
スキルとは何か。これは本当に人によって捉え方が異なるのではないかと思います。
スキルとは「(経験や訓練によって得る)技能」という意味です。また業務においては、特定のタスクを実行するために必要な能力であるともいえます。大切なのは、経験を通じてスキルは獲得され、レベルが向上していくということです。先天的に持っている能力というより、むしろ後天的に新しいことを学びながら経験をして身につけていくことが可能です。
実はスキルには発生から消滅まで(正確には需要がなくなるまで)のサイクルがあります。
まずスキルが生まれた段階では、スキルの需要が少なく、保有している人も少ないため、市場価値が高く、給与も高くなります。そして徐々にスキルの需要が増加するにつれて、スキル移転が進み、仕事の数が増えていきます。そしてある一定のタイミングで需要が下がり始め、給与も下降局面に入り、労働市場からそのスキルの需要がなくなっていきます。
スキルは陳腐化していくため、新しいスキルを身につけていくために、「リスキリングをし続ける」ことが大切です。