「もし2万人に(AEDが)使われたら、それこそものすごく多くの人が助かって、その人自身もうれしいし、その周りの人たちもうれしいというか悲しむことがないんじゃないかな」と、自分の経験からこう話します。

心臓が止まってから1分ごとに生存率は10%低下。3分以内であれば7割以上の生存率ですが、5分経つと50%に下がってしまいます。しかし、救急車を呼んでから到着まで平均約8.6分。

「救急車が来ても、もうそのときには間に合わない。だから市民が(AEDを)使わないといけない。3分以内に使えるのは救急車じゃなくて周りにいる人だから」。川口さんは、私たち一般市民の行動の重要性を訴えています。

暮らす街のAED設置場所を意識して

1分ごとに生存率が低下していく中で、心肺停止した人を発見してAEDが到着するまでの時間をどれだけ短縮できるかということも、たいへん重要です。時間がかかってしまった場合、例え病院へ運び込まれて一命を取り留めたとしても、脳への血流がストップしてしまったために重大な後遺症を抱えることになり、社会復帰が難しくなってしまうのです。

「自分が住んでいる街やよく訪れる場所では、AEDがどこに設置されているかということを普段から意識してほしい」と、川口さんは話します。

しかし、川口さんと街を歩くと、AEDの設置場所や管理法に関してさまざまな課題が見えてきました。川口さんとのAED探し街歩きの中で唯一の頼みだったのは、「日本全国AEDマップ」でした。AEDの所有者や発見した人が持ち寄った情報でマップが完成されています。

▷問題点1 AEDがあるのに、営業していない

AEDがよくある場所として知られる病院やデパート。しかし、時間帯によれば、営業が終了していることも。近年では、地方自治体が主幹となり、24時間営業をしているコンビニエンスストアなどの場所にAEDを設置する取り組みを推進していることもあります。

▷問題点2 AEDがあるのに、使えない

取材中にAED設置場所の1つとして見つけた「ユニオン歯科医院」さん。10年以上前からAEDを設置しているといいます。使用したことはないそうですが、電池の交換は怠っていないということです。

「電池を替えたり、電極パッドを点検したりしたうえでAEDのコンディションが保たれる。コンディションが整っているAEDがあることが大事」と川口さんは話します。

▷問題点3 AEDがあるはずなのに、ない

AEDの設置は任意。AEDを継続して設置しなければならないという決まりはありません。AEDはリース契約で借りることも可能で、AEDマップには掲載されているのに、現在はリース期間が終了して設置されていないということもありうるのです。

「こういう場所には主によくAEDがあるよという歌を作ってもいいのかな。交番など、よく設置されていそうな場所をまとめ、まずはそこをチェックすることを伝える歌があってもいいんじゃないかな」と、川口さんは今後のさらなる取り組みについてのアイデアをこう話してくれました。

「発信者と受け手が同じような立ち位置だからこそわかることとかもあるんじゃないかなと思います」。これからも川口さんは自分のできる方法で発信を続けていくと言います。

2004年から一般市民でも使用できるようになったAED。川口さんの歌とダンスで、一人ひとりにとってAEDが身近なものとなり、一つでも多くの命が救われますように。

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