「富山で生まれた人は極力採らない」――。

7月5日、総合機械メーカーの不二越が、本社のある富山県内で行った決算説明会。本間博夫会長は本社の移転にかかわる文脈で、そう言い放った。これに対して、「不二越は地元から採用をしないのか」「出身地差別をするのか」と、富山県を中心に批判の声が挙がっている。

7月21日には、富山県が厚生労働省富山労働局宛に「県内企業における人材確保について、公正・公平な採用に関して、懸念を生じさせかねない事案があったことなどから、公正・公平な採用が行われるよう、適切な対応をお願いしたい」と、異例の要請文を送る事態にまで至った。

失言の裏にある危機感

発言自体は、失言だといわれても仕方がない。しかしこの裏側には、不二越が「富山の会社」から脱却しなければならないという、さまざまな危機感がある。

不二越といえば「総合機械メーカー」として、工具や工作機械に始まり、ロボットや、ベアリング、油圧機器などものづくりに必要なあらゆる機械や関連部品を手掛ける会社として知られる。

そんな同社が、昨年7月に大きな経営方針の転換を行った。それは、会社を「ロボットを核にした総合機械メーカーにしていく」というものだった。

不二越の有価証券報告書によれば2016年11月期時点で、自動車や関連産業への売り上げが約半分を占めている。今後、技術革新が進み、エンジンを動力とする自動車から、電気自動車に主役が交代することも取りざたされている。

エンジンの生産が縮小すると、そこで使われるベアリングの使用量も減り、事業の柱のひとつが支えを失うことになる。産業構造が大きく変わる前に、需要が旺盛な産業用ロボットに軸足を置き、経営資源をそこに投入して成長を目指すことにした。

ロボット事業の強化はすでに進めており、まずは海外にロボットの事業拠点となるテクニカルセンターの大量開設を発表。この1年で上海や広州、青島、バンコク、デトロイトなどに7拠点を開設し、さらに年内には北米に2拠点の開設を目指している。