ドナルド・トランプ米大統領による国際貿易に対する国家主義的な米国第一主義的アプローチは、昨年同氏が選挙戦時に掲げた「偉大なアメリカを再び (Make America Great Again) 」戦略の基軸となっている。が、ロシア疑惑などがくすぶる中、この通商策は勢いを失いつつあるように見える。

実際、トランプ大統領はここのところ、あいまいなメッセージを発し続けている。たとえば、7月25日付のウォールストリートジャーナル紙(電子版)に掲載されたインタビューでは、トランプ大統領は、米国への鉄鋼の輸入制限について「医療や税金、おそらくはインフラ(整備)も含めたすべてが終わるまで」待つ必要があると述べている。同大統領は、製鉄輸入は米国にとって「非常に不公平な状態にある」としたものの、関税の導入の優先度は比較的に低いものであることを示唆した。

トランプ大統領は4月、鉄鋼が国家安全保障に影響を及ぼす輸入品を制限できる通商拡大法223条(国防条項)にあたるかどうか、商務省に調査を依頼。調査結果によっては、製鉄の輸入制限もありうると見られてきた。

3月に出した2つの大統領令

トランプ大統領は、国際貿易の拡大は、米国の経済的成長のためにも、世界の安定を図るうえでも望ましいものだとする、長年にわたる米政府内の超党派的合意を「変える」ことを約束して政権の座に就いた。

実際、中西部の州では鉄鋼や自動車などの製造業の仕事が激減しており、こうした地域に住む数百万人の労働者は長らく絶望感にさいなまれてきた。そして、トランプ大統領はこうした労働者の支持を得て大統領に選ばれたわけだが、いったん失われた職を米国に取り戻すことが容易ではないことは、それまでも多くの専門家が指摘していたことだ。

それでも、トランプ大統領は当初から強硬的な姿勢を見せ、就任直後にはTPP撤退に加え、北米自由貿易協定(NAFTA)からも手を引く考えを示唆。さらに、3月31日には、経済ニュース専門局CNBCが「貿易をより公平にするという選挙公約を実現するための基盤」と表現した2つの大統領命令にも署名した。

1つは米国の膨大な貿易赤字の要因を特定することを目的としたもので、もう1つの大統領令は不公平な貿易慣習に関与していると疑われる外国企業に関税を課すことで、反ダンピングおよび相殺関税を強化することを求めるものだった。