世界の自動車産業の流れが変わろうとしている。アウディ、BMW、メルセデス、ポルシェ。2017年7月、ドイツの有力メーカーが相次いで、電気自動車(EV)の国際レース「フォーミュラE」への参戦を決めたのだ。

これは、世界市場で圧倒的なブランド力を持つドイツ勢が「EVシフト」を鮮明にしたことを意味する。7月末、電気自動車版のフォーミュラワン(F1)といえるフォーミュラEの今季最終戦が開かれたカナダのモントリオールから、EVの最先端をリポートする。

アウディとポルシェがWECから撤退

そのニュースは7月28日、最終戦の前日に流れた。

「ポルシェが(ル・マンを含む)世界耐久選手権(WEC)から撤退し、フォーミュラEに参戦する」

ポルシェといえば、フェラーリと並ぶ「速い車」の代名詞。WECの中でも特別とされる「ル・マン」(フランスで100年近い伝統を持つ24時間耐久レース)では過去3年連続で優勝している。その前は5年連続でアウディが優勝している。

ル・マンのトップカテゴリーが「ハイブリッド車」になったことを受け2012年に再参戦したトヨタ自動車にとっては、アウディ、ポルシェを倒して「ハイブリッド世界最速」の称号を手に入れることが悲願。だが、その夢はまだ果たせていない。

フォーミュラEはセーフティーカーもEVだ(筆者撮影)

ところが2016年を最後にアウディがWECから撤退、そして今回、ポルシェも撤退を表明した。2018年6月のル・マンはトヨタにとってライバルのいない寂しいレースになる。

アウディとポルシェがWECから撤退するのは、フォーミュラEに全力を注ぐためと言っても過言でない。アウディやポルシェはWECで培った技術を市販のハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車に生かしてきたが、市販のハイブリッド車では「プリウス」という圧倒的なブランドを持つトヨタに敵(かな)わなかった。