同社は当初、単にシェアオフィス会員からの利用料を積み上げるだけでなく、オフィス内のコミュニティそのものをマネタイズできないかと考えていたようだ。「ウィーワークはシェアオフィスの会員向けに、自社の製品やサービスを売り込みたい企業から紹介料を徴収することを収益源に考えていた」(大手デベロッパー)。法人から徴収した広告料や紹介料で、シェアオフィスのサービスを賄うというプラットフォーマーを目指していた。

だが、「コミュニティプラットフォーム」とも言うべきビジネスは軌道に乗らず、いつしか出店攻勢をかけて“規模の経済”を追求する道へ舵を切った。目論見書を読み進めていくと、ウィーワークがフリーランスやベンチャー企業よりも、効率的に会員を獲得できる大企業に視線を送っていることが見て取れる。

企業向けオフィス設計サービスを新展開

法人会員は主に500人以上のフルタイム社員を雇用する事業者を想定している。目論見書の中でウィーカンパニーは、「われわれのビジネスにとって、収益の安定する長期契約の法人会員は重要な存在だ」と認め、法人会員による料金未払いを経営上のリスクとして挙げるほどに存在感が高まっている。法人会員の割合は今や4割にも達し、拠点によっては会員の大部分が法人であったり、1つの法人だけで埋まっていたりするという。

シェアオフィス事業に黒字化の見通しが立たない中、ウィーワークは新たな事業展開も模索している。2016年に開始した企業向けオフィス設計サービス「Powered by We」だ。500人以上のデザイナーや建築家を有する同社が、シェアオフィスで培ったノウハウを生かしてオフィスの内装やデザインを手がける。企業は工事やデザインにかかった費用のほか、その後の運営費を支払う。

国内ではすでに、2020年度に本社を移転するソフトバンクの移転先をウィーワークが設計する。ソフトバンクは「ウィーワークがデザインする新たなオフィスで、部署をまたいだオープンイノベーションの創出を目指す」としている。

Powered by Weについて、ウィーカンパニーは「デザイン料や工事費は企業側が負担するほか、その後の運営収入も得られるなど資本効率が高い。ビルを賃貸することなく企業にサービスを提供できる効率的な手法だ。より多くの企業がわれわれのオフィス設計を評価するようになれば、利益率も高まっていくだろう」と目論見書の中で評している。ただ、詳細は未公表だが、Powered by Weの売上高は今年1〜6月の累計で約6000万ドルにとどまるようだ。

希代のユニコーン企業か、それとも巨額赤字を垂れ流す不動産会社か。欧米のメディアからは早くも「単なるサブリース事業者ではないか」などと揶揄されている。

自らを「コミュニティカンパニー」と称するウィーカンパニーの目論見書には、「Community」という単語が150回も登場する。だが、「コミュニティづくり」という雲をつかむような構想に無尽蔵の資金を投じるほど、投資家は甘くはないはずだ。

著者:一井 純