「逃亡犯条例」改正案をめぐり大規模な抗議活動が続く香港。デモが本格化してから約3カ月、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月4日、ついに改正案を正式に撤回すると表明した。

週末に行われるデモは8月末で13週連続となり、一部で地下鉄など公共交通への破壊行為が激化。混乱の収拾に向けて政府側が撤回を受け入れた形だが、民主活動家らが掲げる普通選挙の導入など、ほかの要求には応じていないことから、デモによる混乱がこれで収束するかは不透明だ。

交通機関もマヒ状態

アジアを代表する金融取引の中心地の1つであり、国際的な観光都市でもある香港。この街を訪れる人は、誰しもが充実した公共交通機関の恩恵を受けることになる。

市内には地下鉄網が整っており、二階建てバスが走り回る。香港島には昔ながらの二階建てトラムがのどかに行き交い、ビクトリア湾ではスターフェリーと呼ばれる船が100年以上にわたって人々の足となっている。香港の交通機関は市民の移動手段であり、観光資源でもある。

香港の地下鉄駅構内を移動する黒シャツとマスク姿の若者たち(筆者撮影)

デモでは、これらの交通機関がマヒ状態になることがしばしば起こっている。かねて香港にはデモ参加者、あるいはデモへの連帯を示す黒シャツとマスク姿の若者たちが見られたが、とくに8月31日夜に起きたデモ隊による「破壊」はこれまでにない激しいものとなった。さらに、取り締まる警察の暴力が反感を買い、活動家の先鋭化を招いている。

同日は当局により集会が不許可とされたが、市民らの間で「街中に行ってショッピングをしよう」と訴える声が広がり、日中の早い時間から不穏な空気が街中を覆っていた。一方、香港の地下鉄などを運行するMTR(香港鉄路)の対応は、午後4時の時点で全93駅中、香港島の地下鉄駅1カ所を閉鎖するにとどまっていた。