急速な進化を続けているAI(人工知能)。すでに身近な商品やサービスに組み込まれ始めており、いずれAIに代替されてしまう仕事も出てくるだろう。

「AI(人工知能)時代を生きるためには読解力が必要だ」。

新井紀子・国立情報学研究所授はそう断言する。新井氏は「ロボットは東大(東京大学)に入れるか」(東ロボ)というAIのプロジェクトを率いた数学者だ。東ロボは2016年の高校生向け模擬試験で、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)クラスの複数の大学に「合格可能性80%以上」という判定をたたき出した。

AIの力を世に示した新井氏が、なぜ読解力の重要性を説くのか。それはAIの弱点も知るからだ。実は東ロボでは、東大合格が難しいという判断に至った。国語や英語の長文読解に歯が立たない、図の示す内容がわからないといった課題を克服できなかったためだ。

AIは“意味”を理解できない

『週刊東洋経済』は10月7日発売号で、「AIに負けない読解力を鍛える」を特集。AIが不得手とする読解力を鍛えるにはどうすればよいのか。本特集ではその方法を伝授する。

「AIは“意味”を理解できない」と新井氏は言う。その理由はAIの仕組みにある。「モーツァルトの最後の、そしてたぶん最も力強い交響曲はこの惑星と同じ名前をしている。この惑星の名前を答えよ」という問題をAIはどう解くか。

まず問題文を単語に分解して構文解析を行い、膨大なデータから重要なキーワード(「モーツァルト」「最後」「交響曲」など)を決める。それをウェブ上にあるような大量の情報の中から検索し、キーワードと一緒に現れる惑星の名前があれば、それを答えとして返す(なお正解は「ジュピター」)。

つまりAIは文を読んでいるのではなく、確率と統計に基づいてデータ処理をしているだけ。その結果として、答えが「よく当たる場合がある」というのが実態だ。しかも答えの正しさは保証できない。