最近では、より直接的には、自分にない力を身に付けるために、本業とは異なる仕事でパラレルキャリアを歩む人も増えている。また、自身の市場価値についての相談が多いが、転職は置いておいても、自分の対外価値がどのくらいなのかを把握しに行くのも一手だ。今の組織でどんな力が身に付いていて、それが世の中のどんな業種・職種で通用するのかについてアドバイスを得ることは自身を客観視するうえでも参考になるだろう。

つまり、大切なのは自分のスキルや能力が「世の中一般的にどの程度のものなのか」を知ること。一本道のキャリアが決して悪い訳ではない。本来自身がありたい姿を踏まえて、世の中水準で自分の強みも弱みも自身の価値として自覚したうえで、今後の未来をどう選択するかが重要であり、これが現代の上長としての背中の見せどころでもあるだろう。

会社がキャリア開発を現場に丸投げ

さて、ここまでは直属の上司によるマネジメントを要因に挙げてきたが、これらが起きている真因は、実は、現場の管理職というより、人事や経営にある。というのも、時代が変わり人々の価値観が変わっているのにもかかわらず、社員のキャリア相談を現場の管理職に一任しているのは、本来は酷な話ではないだろうか。

現代のマネジメントは昔よりも難易度が高い。転職者も多いし、仕事や家庭の両立も当然に求められる。国際色豊かな職場も増えてきた。一人ひとり働く価値観の異なるメンバーが、同じ部署で働くようになったのだからこそ、上司は部下全員のロールモデルにはなりえない。今後さらにダイバーシティーが進んでいけば、ますます難易度は増していくだろう。

つまり、現場の上司たちが部下のキャリアの悩みに十分に対応できていないのは、ある意味で当然のこと。それなのに、会社がこの変化に気づいておらず、“丸投げ”をしていることが多い。人事や経営は、もっと社員のキャリア支援に踏み込むべきだ。

実際、先進的な企業からは、全従業員の市場価値を外部視点で査定して伝達してほしいとか、本人向けはもちろん、上長側にキャリア開発支援ができる力を身に付けたいという相談は、増えている。

「社内コーチ」のみならず、「社外メンター」制度を導入している企業も参考になるだろう。直属の上司ではないナナメの関係をつくることで、客観的なアドバイスができるとともに、自部署に閉じない視野で会社を捉えるきっかけにもなり、離職低減策としても機能する。また、自身の評価者ではない人がアドバイザーになることで、本音で相談できるという効果もある。

いずれにしろ、今の中堅社員はひと昔前には見られなかったようなキャリアの悩みを抱えている場合が多い。それは見方を変えれば、全員一律のやり方で解決することは不可能だということ。だからこそ、より個人にフォーカスしたマネジメント・人材育成へとシフトしていく必要がある。

例年、年末年始を迎えると、転職を考える方からのご相談がわれわれにも急増するものだが、さて、新しい年を迎え、皆さんはどんなキャリアを歩んでいきたいだろうか。自身のキャリアや、今の組織のキャリア支援のあり方を真剣に考えるきっかけにしていただければ幸いだ。

著者:徳谷 智史