まずは1月初旬、偏差値も大学合格実績も健闘する埼玉、開智中学の入試からスタート。2回目の試験で無事に合格を勝ち取った。

そのまま第1志望の学校の入試に進めればよかったのだが、日程的に、次は第2志望の城北となる。

ここは、第1志望校と偏差値の差はさほどないが、問題の傾向がまったく違う。しかし、第1志望校同様の準備はしてきたつもりだった。そのうえ、城北は複数回受けることができる。何回か受けるうちに受かるかもしれないという期待がなかったわけではない。

親子で乗り越えた撃沈

だが、受験は甘くはなかった。試験当日、やるだけのことはやったが手応えは本人いわく「ゼロ」。

夜にネットで合格発表を見ると、予想どおり落ちていた。だが、この学校は翌日も受けられるため、このときはそれほどの落胆はなかったようだ。続く翌日の2回目の受験は会場にも慣れたのか、手応えを感じていた。「昨日の入試よりかはできたかも!」受験を終えて出てきた瞬間に柚月くんの顔がほころんだ。「ほんと!やったね!」母親の知美さんも息子の得意げな表情に、まるでもう合格したかのような気持ちになっていた。

前日同様、発表はネットで見た。結果はなんと不合格。この文字を見た瞬間、柚月くんの心がポキリと音を立てて折れた。

「だから無理だっていったんだよーー!!」

普段は見せたこともない姿だった。感情をすべてぶちまけたかのように、激しく泣き叫び始めた。その後、いったん落ち着きを取り戻したかと思うと、突然、これまで取り組んできた数年分の過去問や、自分のノートを眺めはじめた。そして、今度は背中を震わせながら、さめざめと泣きはじめた。

長い時間が過ぎていく。そんなわが子の姿を見た知美さんは、柚月くんを抱きしめずにはいられなかった。こんなつらい思いをさせてしまうなんて、受験なんてさせないほうがよかったのだろうか。あんなにこの子は頑張ってきたのに……。親子二人三脚で頑張ってきた光景が頭を巡った。

だが、泣いているわけにもいかない。大本命に向けて、気持ちを立て直さなければならない。

その夜、塾の先生からも電話がかかってきた。事前に受験番号を伝えているため、不合格を知っていたのだろう。泣きながら電話に出た柚月くんに活を入れる先生。スピーカーフォンからは「やるっていったんだろ。頑張れるか」と励ます先生の声が聞こえた。

「あの日のことは今でも鮮明に覚えています」(知美さん)

翌朝、知美さんは豆を用意した。季節は節分。「ママが鬼をやるから、ママに向かって豆を投げなさい。豆をまいて、この嫌な空気を吹き飛ばそう!」そう提案すると、柚月くんは泣き腫らした目でニコッと笑い、豆を思い切り投げはじめた。「頑張れ!柚月!」心の中でそう叫びながら豆を受ける知美さんの目は、また涙で濡れていた。