とはいえ、ドライバーレス運転の実現にはいくつものハードルがある。その1つが自動運転システムの構築だ。自動運転にはATCが必要となるが、その導入には地上のインフラや車両の改修が必要となり、多額の費用がかかる。一例を挙げると、JR東海は2014〜2026年に546億円かけて東海道新幹線のATCを更新すると発表した。1km当たり約1億円のコストがかかる計算だ。

JR九州は、赤信号の区間に列車が進入しようとした場合に自動的にブレーキをかける自動列車停止装置(ATS)は在来線全区間に設置済みであるものの、より高度な機能を持つATCは新幹線区間にしか設置されていない。

そこでJR九州はATSを活用することを考えた。同社のATSにはもともとATCに似た機能が備えられている。そこへATOを高機能化することで、ATC、ATOの組み合わせと遜色ないレベルまで自動運転の機能を持たせることに成功した。開発費用は車両搭載装置が6000万円、地上インフラが1億4000万円の計2億円。ATCを整備する場合に比べると格段に安上がりだ。

2020年度の実証実験が目標

香椎線で公開された走行試験では、運転士は運転台にある白いボタン2つを同時に押して、列車をスタートさせた。ボタンを2つ押すのは誤動作を防ぐためだ。

列車が動き出すと、運転士が操作することなく列車は加速や減速を繰り返した。非常にスムーズという運転ではないが、自動運転であることを知らずに乗れば気にならないレベルだ。列車は次の駅で停止。所定位置に寸分たがわずとはいかず、数十cmずれた。当日の風の状況などが列車速度に微妙に影響するためだという。ただ、JR九州は「ホームドアが設置されていないので、プラスマイナス2mのずれは許容範囲」という。

JR九州は今回のような走行試験を2月中旬まで行う予定。その後は営業列車を使った実証運転を2020年中に行いたいという。そしてその先には運転士ではない係員が乗車するドライバーレス運転という目標がある。

この技術はほかの鉄道会社にも展開できるとJR九州は考えている。大きなインフラ投資が必要なく、ATCに比べ格安で導入できるので、運転士不足と資金不足に悩まされている全国のローカル鉄道会社に朗報となるかもしれない。