専門家に話を聞いたら、「新規で店を始めようとする人たちは、20代と50代が多いのだ」と教えてくれた。過度な高学歴社会のため、大学進学率は7割を超える。若者は「高学歴の自分は中小企業なんかに行く人間じゃない」と思うから、若者の就職難が深刻化する。韓国の失業率は大体4%前後だが、19〜29歳に限ってみれば10%ぐらいに跳ね上がる。自分が希望する仕事が見つからないから、自営業を選ぶことになる。

韓国は大企業でも定年までしっかり働かせてくれる企業は多くなく、50代で脱サラする人が結構いる。彼らも再就職がうまくいかず、やはり自営業を選ぶ。自営業で人気があるのがコーヒーショップとチキン専門店。どちらもある程度の資金があればなんとかなるからだ。フランチャイズに加盟すれば特別な技術も必要ない。だから、チキン屋が今も韓国で増え続けるのだ。 

韓国社会で蔓延してる「青年失業地獄」

私がソウルに住んでいたころ、若者の就職難を実感した場所はほかにもあった。ある日、当時小学生だった息子が、いつも通っている床屋にはもう行きたくないと駄々をこねた。いつも使っていた床屋は、韓国語しか通じなかったので、だんだんおしゃれ心が出てきた息子には不満だった。

「前髪をあんまり切らないで、後ろも刈り上げないで」といった細かい注文ができないからだ。大人も子供も1人1万ウォンでお手軽だったが、シャンプーもひげそりもないし、「髪が短くなれば満足」という程度の店だったので、息子の要求に従って日本人もよく行くお店に変えた。

そこは大人2万5000ウォン、子供1万5000ウォンだが、予約がきくので待たされないし、店も広々としている。肝心の言葉は韓国語だが、日本語ができるスタッフもいる。シャンプーもあるし、技術もまあまあで、息子はすっかり気に入った。

そこで、ちょっと驚かされたのが、若い人が大勢いたことだ。日本も美容院や床屋は若い人が働いているのだが、この店の場合、理髪係ではない若者の数が多かった。シャンプーだけする係とか、肩をもんでくれる係とか、お茶を運ぶ係とかだ。

これも、韓国で有名になった「青年失業地獄」の1つの光景なのだろうと思った。働き口を見つけるため、若い人たちは「スペック」と呼ばれる資格や特殊技能の取得に必死になる。それでも、求職者が満足する大企業や官公庁などの働き口は限られている。床屋だけではなく、大型スーパーやカフェなども若い従業員があふれているのが現状だ。これが激しい受験戦争の成れの果てというのでは、あまりにも悲しい。