不動産業界が認知症対策に取り組み始めている。これまで高齢化の影響では孤独死が問題とされてきたが、この1〜2年で見守りの仕組みが多様化して早期発見しやすくなったことに加え、保険の整備が進み、孤独死そのものの対策の道筋は多少だが、見えてきた。

一方、新たに明らかになってきたのが認知症居住者の増加だ。分譲マンションを管理する会社の中には管理人に認知症への知識をつけようと、認知症サポーター養成講座(以下講座)を受講する例も出てきている。

アンケート調査で露呈した問題の数々

2019年11月に不動産関係の仕事に従事する女性の会「お不動女子会」が主催して講座を開いたのに始まり、認知症について学ぼうという不動産会社が相次いでいる。きっかけとなったのは全国宅地建物取引業協会連合会の研究機関である、不動産総合研究所による2018年度の研究報告だ。

巻末に、全宅連および全宅管理に加盟する管理会社に聞いた、高齢者が民間賃貸住宅に居住したことによって起きたトラブルについてのアンケート調査の結果が掲載されているのだが、これがリアルに怖い。孤独死に加え、これまであまり認識されてこなかった認知の衰えによるトラブルが多いのである。

例えば集合住宅では、火災の懸念から石油ストーブなどを使用禁止とする規約、契約が多いが、それを無視し、何度注意しても石油ストーブを使い続ける、歩行が不自由な高齢者がいる。

冷暖房にはエアコン、調理器具にはIHを導入している物件で、万が一失火の場合には本人が一番危険なうえ、延焼の可能性があるにもかかわらず、聞き入れようとしない。廊下でお盆の迎え火を焚いて廊下を焦がした、ボヤを出されたという回答もあり、それ以上に広がっていたらと思うとぞっとする。

臭いや音、建物・敷地内などでの放尿、脱糞のように同じ建物に住みたくないような例もある。「排泄などが難しくなった高齢者の両隣からアンモニア臭がひどいと苦情が来た」「話し声が大きく、テレビも大音量のため、隣人すべてから苦情」「共用部で大小便をする」。生活時間帯が異なることもあって音問題はしばしば起きており、中にはやむなく若い人が転居というケースも記載されていた。

幻覚、被害妄想、徘徊などのトラブルもある。「ありもしない自室への他人の侵入を隣の入居者や管理会社、警察に訴える」「室内にあった所持品が家主の合鍵を利用して盗まれたと主張する」「徘徊して警察から連絡が来た」。