筆者は外資系金融機関で証券アナリストとして日本企業の分析を担当してきました。外国人投資家と会う機会も多いのですが、「日本企業の投資家担当者はコロコロ変わる。なぜそんなことをして、株価を下げるリスクを負うのか?」と言われることがよくあります。

日本企業をしっかりと調べ上げている外国人投資家ですから、「日本では人事異動がよくある」という実態は把握しています。とはいえ、「上場会社の時価総額に影響する投資家の窓口担当者までも2、3年で交代させる理由がわからない」というのです。

外国人投資家がわざわざ来日して取材に訪れた際、新任担当者が出てきたりする。せっかく前任者が投資家対応に慣れてきたのに、あっさり異動させる意味もわからない、というわけです。「これまでの教育コストが無駄になっている」と、会社の業績に結びつけて担当者の交代を捉える外国人投資家も少なくありません。

頻繁な異動で「社員のプロ化」を阻む日本企業

どうして日本企業はそんな「無駄な人事異動」をするのでしょうか。理由は簡単、人件費を安く抑えるためです。担当者が「プロレベル」になると、給与は高くなっていきます。その前に異動させて、コストを抑えるのです。

日本の企業では製造業文化に起因するゼネラリスト志向の人材育成が長く続いています。社員は頻繁な異動や年功的な給与を受け入れており、一定の時期まで同期とは横並びで処遇されます。

出所:経済産業省『IT人材に関する各国比較調査』(2016年)

2016年に経済産業省が行った『IT人材に関する各国比較調査』によると、日本ではIT人材の平均年収が国内全産業のそれに比べても、さほど高くありません。2倍以下の水準です。一方で、インドやインドネシア、中国では7倍から10倍になっています。

プロフェッショナルのエンジニアなど給与が高騰していることがわかります。アメリカでも2倍以上の水準で、IT人材の平均年収は1000万円以上。日本のIT人材の倍近くを稼いでいます。これは裏を返せば、日本ではIT人材の人件費を抑える仕組みが「成功している」と考えられます。