その後、2004年4月から「空港への足」として運行を開始。ただこの頃は、「2人でリニアに乗るとタクシーの方が安い」という事情があったため、始発駅の「龍陽路で降りたい」と運転手に言うと「空港まで乗せて行く、リニアなんかに乗るな」と絡まれ、ずいぶんと困ったものだった。

ちなみに、リニア運行会社webサイトに記された年表を見ると、2006年4月に正式運行開始とある。これは「商業的試運転」を通じ、台風や大雨、大雪などの悪条件下でも安全に運行できることが証明できたとして、国の所轄当局から正式竣工が認められたことを指す。

運行開始後は浦東国際空港の利用客だけでなく、時速430kmを体験したい海外からの団体客による観光利用もあり、それなりの賑わいを見せている。

ただ、そもそも上海リニアは、中国の21世紀における長距離陸上交通整備を高速鉄道で進めるか、あるいはリニアモーターカーを導入するかを検討するために試験的に敷かれたという意味合いもあった。そのため、路線は上海の中心街から離れた龍陽路という駅で途切れている。路線の正式名称も「上海磁浮示範営運線」(示範とは模範の意味)だ。

延伸の計画は頓挫

リニアは上海西郊の上海虹橋空港を経由し、約200km離れた杭州まで延伸する計画があり、2006年に政府が承認していた。そうした経緯もあり、虹橋空港隣接の交通ターミナルには、リニアが入れる駅用のスペースが設けられている。当時上海では、2010年に国際博覧会(上海エクスポ)が計画されていたこともあり、こうしたイベントを機にリニアの延伸が期待されていた。

上海リニアの車内。5両編成の一部は1等車で、ドイツの高速列車ICEのデザインの片鱗が見受けられる(筆者撮影)

しかし、リニア予定路線の沿線住民による反対などもあり計画は頓挫。延伸どころか市内中心部にも入れないリニアはその後苦戦することになる。収支が改善することもなく、建設以来、15年以上の間厳しい経営が続いている。ちなみに上海―杭州間には2010年10月、軌間1435mm(標準軌)の高速旅客専用線が開通している。

今回の減速運転を巡っては、中国内の鉄道愛好家の間でも議論を巻き起こした。曰く、「交換用部品の不足」「車両の老朽化」などが理由だろう、という声が大きかった。実際に経年劣化も著しく、過去数年間は「これで時速430kmで飛ばせるんだろうか」と不安を感じたこともある。

また、周辺住民への悪影響も取り沙汰されている。2008年の資料によると、沿線住民が「磁場の発生や、低周波による人体への影響がある」と地元自治体に訴えていたとの記録もある。

現地の鉄道ファンは、今回の減速運転の報道へのコメントとして「収支が悪く、延伸もない。このまま廃線の道をたどる可能性もあるのでは?」と厳しい声を寄せている。別のファンも「当初は世界中の人々から注目を浴びる、上海を代表する観光アトラクションだったが、今ではただの乗り物と化している」と手厳しい。