では、時速300kmに減速したことでどのような影響が出ているのだろうか。

リニアは以前から早朝、夜間を中心に減速運転を行っており、もともと最高時速430kmでの走行は日中に限られていた。今回の300kmへの減速は2月初旬から実施されている。運行会社は理由を説明していないが、コロナ禍が深刻となる中、航空機の運行が削減されるのに合わせて運行時間も短縮し、本数も間引きしている。

空港駅―龍陽路駅間の所要時間は、最高速度を時速300kmに抑えても延びるのはわずか1分程度だ。最高時速430km運転の場合は7分20秒が正式な所要時間とされているが、15〜20分間隔で走る乗り物が1分くらい遅くなったところで大勢には影響がない。むしろ環境負荷や設備の維持などを考えると、減速運転も悪くない選択と思われる。

龍陽路駅のチケット売り場。コロナ後にこのようなにぎわいは戻るだろうか=2018年6月(筆者撮影)

すでに全長3万km近い高速鉄道網が整備された中国では、幹線ルートでは最高時速350kmでの走行を実現。時速300km運転の路線も少なくない。減速運転の実施で高速鉄道よりも遅くなったリニアは、実用性以外に「地面での飛行体験」を楽しむ観光資源としての魅力も半減してしまっている。

現地の鉄道関連メディア「鉄道視界」の関係者が、このタイミングでの減速運転実施について運行会社に尋ねたところ、「コロナ禍で乗客が減っているので、スピードを落とし、運行本数の調整をしている」と回答を受けたという。需要の回復を待って、430km走行復活への含みもあったという。

一方で「国産リニア」開発も進む

一方で、中国は「国産リニア」の開発を進めている。山東省青島市にある車両メーカー、中国中車青島四方機車(中車四方)は2019年5月、自社製造のリニアモーターカーのモックアップを公開。以前リニア延伸計画があった杭州にもこれを持ち込み、市民の参観に供したという。

同社は2018年秋、世界最大級の鉄道展示会「イノトランス」にカーボンファイバー製の地下鉄車両を展示して来場者の注目を集めたが、一方でリニアモーターカーの開発も進めていたわけだ。

そうした中、杭州市が位置する浙江省は今年4月中旬、上海と杭州・寧波を結ぶリニア路線を新たに建設したいとの構想を打ち出した。ここへ中車四方製のリニアを導入する可能性が高く、地元では「時速600kmで2都市を結べば所要時間20分」と話題を呼んでいる。中車四方は今年中にも国産リニアのプロトタイプを完成させ、来年中には試験走行を始めたいとも述べている。

計画が実行されれば、日本のリニア中央新幹線全線開業より先に完成してしまう可能性もなくはない。約10年で世界最大の高速鉄道網を建設した中国は、都市間を結ぶ高速リニアでも先陣を切ることになるのだろうか。そしてその際、現在の上海リニアが新線の一部として取り込まれることになるかどうかも気になるところだ。

著者:さかい もとみ