オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。

退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。

今回は、アトキンソン氏が「生産性向上」を訴え続けている、真の理由を改めて解説してもらう。

人口減少・高齢化の危険は「コロナと同レベル」以上

今、日本をはじめ世界中が、新型コロナの脅威にさらされています。一刻も早い終息を祈るばかりです。

ところで、実は日本はもう何十年間も新型コロナと同レベル、いえ、それ以上の危機に晒されていると言ったら、驚かれるでしょうか。しかし、残念ながらそれは事実です。その脅威とは、人口減少と高齢化です。

「コロナ禍では、実際に多くの人が亡くなっている。人口減少・高齢化と比べるのは不適切だ」

そんな意見が聞こえてきそうです。しかし、その指摘は間違いだと言わざるをえません。違いは「危機が迫ってくるスピード」だけで、対策を打たなければ尊い命が失われることに変わりはありません。

日本の生産年齢人口は、2015年の約7682万人から、2060年には4418万人にまで激減します。減少幅は、実にマイナス42.5%にものぼります。一方、高齢者は同じ時期に3395万人から3462万人へと、むしろ若干増加することが予想されているのです(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」出生中位・死亡中位推計)。

高齢者が減らないことは、彼らの年金・医療を支える社会保障負担も減らないことを意味します。その負担が、激減する生産年齢人口の肩にのしかかるのですから、何も対策を打たなければ到底、持ちこたえることはできません。