オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。

退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。

今回は、「最低賃金を引き上げても雇用全体には影響しない」という「専門家のコンセンサス」を解説してもらう。

「専門家の間でもコンセンサスがない」は本当か

先週、最低賃金中央審議会において、最低賃金の実質的な据え置きが決まりました。消費税が10%に引き上げられているのですから、最低賃金を1円でも、1%でも引き上げる合意ができなかったことは残念に思いますが、コロナ禍だから仕方ないということでしょうか。

経営者の団体は「雇用を維持するためにも最低賃金は据え置くべき」と言っていますので、果たして本当に雇用を守るかどうかが、今後の最大のポイントとなるでしょう。

とはいえ、今年は引き上げなかったからといって、最低賃金を引き上げていく方向に変わりはないと「骨太の方針」には書かれています。

これまでの連載で指摘したとおり、モノプソニーの力を制限するために最低賃金を引き上げると、経営者が労働者を「安く買い叩く」ことが難しくなります。ですから、最低賃金の引き上げに必死に反対する人がいるのは理解できます。

反対派はあることないことを言っていますが、彼らの意見に同意することはできません。なぜなら、彼らの主張は理屈が通っておらず、また正しくないからです。

最低賃金引き上げの是非を議論する際、反対派が必ずと言っていいほど言及することが2点あります。それが、①海外では最低賃金の引き上げによる雇用への影響に関して、まだ研究者の間でもコンセンサスがない、②韓国では最低賃金引き上げで失業者が増えたという事例です。

今回は①について検証し、②は次回、検証していきたいと思います。