地方会社から名の知れた大手まで、海外で航空会社の経営破綻が続出する非常事態を受け、ANAは資金繰りを強化している。2020年4月〜6月に銀行から5350億円を借り入れると同時に、いざという時に資金供給を受けられるコミットメントライン(融資枠)も5000億円まで拡大した。福澤常務は「当面の間、持ちこたえられるように資金調達をした」と説明する。

2020年3月期の月平均固定費(人件費や機材費、整備費など)は、グループ全体における営業費用の6割とすれば950億円程度。月約150億円の減価償却費を差し引くと、毎月約800億円の資金が固定費として流出していく。

日本航空との統合の可能性は?

2020年6月末時点で、現預金と有価証券、コミットメントラインを足し合わせたANAの資金総額は1兆円を超える。ここから1年以内に返済や償還が必要な約2200億円の有利子負債を差し引くと、仮に当面の間収入がゼロになったとしても、今年度いっぱいは固定費を賄えることになる。

ANAの運航便はコロナの影響で欠航が相次いだ(撮影:梅谷秀司)

ただ、足元で新型コロナの感染者数が再拡大。7月14日に計画比88%まで復帰させる方針だった8月の国内線運航便数を、7月27日には同77%にとどめると見通しを後退させた。

需要の回復が遅れれば、6月末時点で9743億円ある純資産の侵食は避けられない。「コスト対策と収支改善を金融機関に説明しつつ、借り換えを行っていければ」(福澤常務)という資金繰りの想定も、もくろみ通りにはいかなくなる。

財務基盤の充実のため、増資というシナリオはありうるのか。仮に競合の日本航空が増資の引受先になれば日本の航空業界史上、最大の再編劇となるが、6月の株主総会でANAの片野坂真哉社長は「一部のメディアで再編に関する記事も出ているが、こういった事実はまったくない」と、その可能性を突っぱねている。

7月の決算会見で福澤常務も、「培ってきた財務体質が生きているため、これからの(第三者からの)出資については慎重に見極めていきたい」としたうえで、「もし下期以降に(資本増強を)行うとすれば、(形態は)劣後ローンなどになるかもしれない」と話すにとどまった。