設置場所の確保に次いで、大きな課題となったのが、移設・保存に関わる莫大な事業費だ。概算で見積もると、輸送費の750万円を筆頭に、当面の費用として、総額で約1000万円が必要となることがわかった。

しかし、現在はコロナ禍により地元の商工業者の経営状況は厳しく、大口の協賛は期待できない。そこで、協賛金を小口化して募るとともに、クラウドファンディング(9月25日期限)を立ち上げることにした。内訳としては、保存会自己資金300万円、企業協賛募集200万円、残りの500万円をクラウドファンディングで調達することになる。

「長崎電気軌道には、クラウドファンディングの結果が出るまで、契約を保留してもらっている。クラウドファンディングが失敗すると、振り出しに戻ってしまう。全国の鉄道ファンの皆さんや小田原ゆかりの方々に、ぜひ、ご協力をお願いしたい」と、平井氏は支援を呼びかける。

「里帰り」未来にどう生かす

なお、資金調達が成功したならば、来年1月上旬を目標に、車両の移送・搬入を完了させる予定だが、その後も気を抜くことはできない。全国の保存車両の多くが、腐食が進んでいる状況を見れば、鉄道車両を保存・維持するのが容易でないことは一目瞭然だ。

保存会会長の小室氏(右)と報徳二宮神社宮司の草山氏(筆者撮影)

紫外線に加え、小田原は海に近いことから塩害の影響も懸念され、紫外線カット塗料やさび止め剤などにかかる費用も少なからず発生する。また、清掃・メンテナンスの人手も確保しなければならない。

「メンテナンスに最善を尽くすのはもちろんだが、仮に車両の劣化が進んだ場合は、当然、われわれの責任で撤去することになる。その意味でも、保存場所の契約は10年を1区切りにする予定になっている」(保存会関係者)

里帰りが実現することを筆者も願ってやまないが、里帰りを果たした車両を小田原の未来へどのように生かしていくか、真の戦いはこれからになりそうだ。

著者:森川 天喜