山下さんのお子さんは、おそらく自己肯定感がかなり低い状態に置かれているのではないかと思います。しかも、それは勉強によって低くなった、とも考えられます。「勉強ができない=自分はダメな人間」「勉強しろと言われる自分=自分はダメな人間」といった構図によって。ですから、山下さんへの回答は、勉強をさせる方法ではなく、「子どもの自己肯定感を高める」がキーワードになります。

2020年9月3日に発表されたユニセフ報告書「レポートカード16」の先進国の子どもの幸福度ランキングは日本に衝撃を与えました。その報告によると、日本の子どもの幸福度は38か国中20位ですが、詳しく見ると次のようになっていたからです。

精神的幸福度:37位(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率)
身体的健康:1位(子どもの死亡率、過体重・肥満の子どもの割合)
スキル:27位(読解力・数学分野の学力、社会的スキル)

筆者は、この背景に「子どもたちの自己肯定感の高さ、低さが関係している」のではないかと考えています。これまで日本各地で、中高生対象の講演会も数多く行ってきましたが、そこでも同じように、自己肯定感の問題を強く感じてきました。

中学受験をはじめ、“受験のための勉強”に耐えられる子どもたちもいますが、そういった勉強にはまったく向いておらず、別の能力や資質を持っている子どもたちもたくさんいます。そのような子どもたちに、本人の許可を得ずに、勉強を無理やりやらせたことによる弊害を数多く見てきました。子どもの幸福とは何なのかということを、あらためて考えさせられるデータです。

成果が先か、自己肯定感が先か

21世紀に入り、職業の種類や求められる能力も変わり、新型コロナによりその変化が加速したとも言われています。勉強とは何のためにあるのか、進学とは何のためにあるのか、それを問うことによってはじめて、その子の能力や才能が開花すると考えています。

勉強ができない子でも、成績を上げる方法はあります。しかし、そこでは勉強によって潰された自己肯定感を回復するということが先にありました。つまり自己肯定感の修復作業として勉強をできるようにさせていったのです。その後、その子の生まれ持った能力や才能を伸ばしていけるようにサポートや指導すること、これが本当の教育だと思っています。

そこで、山下さんへの回答は次のようになります。

山下さんは、ご自身が、子どもを潰してしまったという自覚があることから、その段階で50%くらいはいい方向へと向かっています。最も怖いのは、自覚がない場合ですから、山下さんの場合は、これからいい方向へと進むと思います。